2021.10.23 引退ブログ
「今日も生涯の1日なり」(篠原新汰)
平素より大変お世話になっております。長谷川友己から卒業ブログのバトンを受け取りました。総合政策学部4年、副将の篠原新汰です。
まずは、関東リーグ開催につきまして、このような状況下の中で関係者の皆様の多大なるご尽力で私達に真剣勝負の場を与えて下さったこと、深謝申し上げます。
友己、紹介ありがとう。大体のピッチ上で起こるエラーは「大丈夫」で済ませていますが、「大丈夫」と言っている時、2〜3割ぐらいは本当に大丈夫じゃない時があります。でも、言霊っていうんですかね、口に出したら大体のことは本当に大丈夫だったりします。是非、やばいと思った時にこそ「大丈夫」と自分や仲間に言い聞かせてみて下さい。
友己がグラマネになることは最初全く想像出来ませんでした。(というよりしていませんでした)サッカー理解に優れ、ピッチ上のコンダクターとして活躍する選手だったからです。今ではピッチの外から正真正銘の「指し示し導く者」としてCチームを引っ張っています。一緒にプレーする機会は少なかったけど、ゆくゆくは友己の指導するチームでプレーしてみたいなと思います。CBの補強が必要だったらいつでも連絡下さい。
さて、ここからは最後のブログに移っていきたいと思います。ここまで同期の沢山の経験、想いを読んできて、皆を誇らしく思うと共にこの4年間が改めて濃密で貴重なものだったということを再確認しています。普段から言葉にするのが得意な人もいればそうでない人もいるので、読んでいく中での新たな気付きが沢山ありました。特に大学受験時代から一緒に頑張ってきた小山内(4年・青森山田高)のブログを読んだ時は、入学当初500字の課題レポートを渋っていた彼が1人で長く想いの籠った文章を書けるように成長したのか、と感動しました。あと少し、彼のお世話も頑張っていこうと思います。
すみません、前置きが長くなってしまいました。そろそろ竜一(4年・FCトリプレッタユース/広尾学園高)が話に飽きてくる頃でしょうか。綜一郎(4年・慶應義塾高)からも話が長いと怒られそうなので本題に移りたいと思います。今回のブログではこの4年間で最も濃密な時間を過ごしたラスト1年間について綴っていきたいと思います。
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2度目の後十字靭帯断裂を病院で告げられた時、私は至って冷静でした。診断は全治6〜7ヶ月。2度目の断裂だったため、慣れた様子でリハビリ計画を立てたのを覚えています。診察室を出て、まだまともに歩くことの出来ない膝を引きずりながら電車に乗り、家に帰りました。空は気持ち悪いぐらいに透き通った冬晴れだったのを覚えています。この空を気持ち悪く思っているのは自分だけなのだろうなと思いました。冷静でいなければ、という思いと隠しきれないショックが滲み出し複雑な心境でした。私のラストシーズンはこうして、全く想像もしていなかった形で幕を開けました。
【副将】
2月5日。靭帯を再断裂する2週間前のこと。私は学年の承認を受け、副将に就任しました。この学年、このチームで最高の1年を作っていくんだという強い決意と、それを引っ張っていく覚悟を本格的に持った瞬間でもありました。中学、高校と副将を経験していたのでそれなりの自信もどこかあったのだと思います。しかし、それが過信であったということも後々痛感します。
それから僅か2週間後、前述したように私は怪我をして長期離脱を余儀なくされました。試合中の接触でしたが、直後にダメだということは自分の感覚ですぐに分かり、バツサインも自ら出しました。このサインを出した瞬間から、少しずつ何かが狂い始めたような気がします。直後にアイシングをしながら無言で試合を見つめていた私は放心状態で、目の前には体を張りチームの勝利のために走り戦う仲間がいたにも関わらず、チームを鼓舞する声すら出せなかった。副将を担う者として、失格だったと思います。
選手として貢献出来なくなった自分に出来ることは、ひたすらチームと向き合い続けることでした。リーグ戦で思うように結果が出ず、苦しいチーム状況の中で必死に出来ることを探しました。チームの仕事で出来ることは全てやりました。必死に仕事をすることで何か見えてくるものがあるのではないかと思いやってきましたが、この時ある視点が足りませんでした。
「マネージャーとして成果を求め続ける視点」
です。
ドラッカーのマネジメントにはこうあります。『組織構造は、組織の中の人間や組織単位の関心を、努力ではなく成果に向けさせなければならない。成果こそすべての活動の目的である。仕事のためではなく成果のために働き、贅肉ではなく力をつけ、過去ではなく未来のために働く能力と意欲を生み出さなければならない。(p.200)』
『成果とは百発百中のことではない。成果とは長期のものである。(p.145)』
副将というプレイングマネージャーの立場であるにも関わらずこの視点に欠け、目の前の努力に一生懸命になっていました。学生スタッフとしてこの部を同期から任されている以上、努力の方法は皆と一緒ではいけないのだと感じています。それが学生スタッフとしての責任であり、覚悟のようなものだと思います。
成果に目を向けることは口で言う程簡単ではありません。どれだけ努力しても負けることだってあります。どれだけ準備しても予期せぬエラーが起こることもあります。自分の思い通りにならないこと、期待していた通りに事が進まないことだっていくらでもあります。しかしそれでも成果から目を背け、逃げては駄目だと思います。逃げることは簡単ですし、成果が出ないことを何か理由付けして正当化するのも楽なことです。人間は弱い生き物で、ふとした時に自分を守ろうとしてしまう。そんな時には常に自分に「これで良いのか?」と問い掛けられる強い芯を持っておきたいと思っています。私自身は三流の副将ですが、この立場を皆から貰ったことで気付き、人間的に少し成長出来たような気がします。
【怪我】
リハビリ期間は分かっていても長く、辛いものでした。膝が全く伸びないところから伸びるようになるまで1ヶ月、ジョギングまで3ヶ月、ボールを蹴るまで4ヶ月。腫れが出たら引くまで休息、階段の登り下りは1歩ずつ、自分が前に進めているという実感はなかなか得られず、現状維持に喜びを感じる毎日でした。
リハビリ期間では姿勢の改善と身体のバランス感覚の再構築に取り組みました。雄太(4年・國學院大学久我山高)も書いていたように地道なトレーニングの中で何か自分なりの感覚を掴むことはとても嬉しいものです。見た目にも派手ではないし、やっていても地味なトレーニングを積み重ねることは自分の身体についてよく知る機会になったような気がします。リハビリを進めていく中で自分の身体のことについて知れば知るほど、自分の膝はもう元通りにはならないことも分かってきました。どれだけリハビリをやっても膝の緩さが取れることは未だにありません。気圧が急激に下がると関節が痛みます。(高齢者になった気分です。グルコサミンのCMを自分事として捉えたのは初めての経験でした。)元の状態に戻すのではなく、より良い形で最適解を導き出していき怪我と上手く付き合っていく身体作りの必要性を感じています。
怪我によってもたらされたデメリットはサッカーが出来ないことだけであり、それ以外は全てメリットでした。自分やチームメイト、組織と向き合う時間も出来たし、成長に貪欲になることが出来ました。そして何よりサッカーが出来ることのありがたさ、嬉しさを再確認することが出来ました。
【身の丈を追い求めろ、身の丈の基準を上げろ】
「身の丈に合う」という言葉があります。身の丈とは身長、背丈を意味しそこから派生して「自分の力に相応しいさま」という意味でも使われます。つまり、身の丈にあった行動をするためにはまず、自分の身の丈を知る必要があるのです。
私達選手は監督やコーチ、グラマネ、時にはチームメイトから評価をされて試合に出られるかどうかが決まります。試合に出るためには評価される立場としてアピールをしなければなりません。するとそこには競争が生まれ、他者と自分の比較が発生します。
他人と自分を比較することが一概に悪いこととは言えないし、比較することでモチベーションが上がることも多いと思います。しかし、他者と比較する上で気を付けたいのが、「比較したところで自分の身の丈は何も変わっていない」ということです。比較すると相手より自分が優れているかどうかで判断するため、判断基準が自分ではなく相手に置かれます。すると不思議なことに自分の実力が上がったようにも下がったようにも感じられるのです。先週スタメンだったけど今週はメンバー外だったら自分の身の丈は変わったのでしょうか。そんなことはないと思います。自分の評価は確かに気になりますが、それを気にしている自分自身はもっと良くないと思っています。
だからこそ、常にフォーカスすべきは自分であり、自分の力を伸ばすことに囚われるべきだと思います。常に身の丈にあったプレーをし、思考をし、発信すれば良いのだと思います。自分の出来ることや得意なことに目を向けてそれに取り組み続けていけば、自然と出来ることも増えていくし見える範囲も広がっていきます。これはプレー以外のところでも同じです。嘘を付いてまで人を信用させたり、偽って見せかけだけでも大きく見せようとしていては、自分は何も変わらないままです。大切なのは今の自分に何が出来て、何が出来ていないのかを知ることです。それは自分の能力を過小評価も過大評価もせずにありのままの自分を受け入れるということだと思っています。ありのままの自分で他者と真っ直ぐ向き合うことは真摯さにも繋がります。真摯さは信頼される上で1番重要なことです。
この4年間の多くのことが苦しい経験だったかなと思います。楽しいことは全体の2割ぐらいでしょうか。「苦しみ」については悪いこと、避けるべきことであると無意識に考えているかも知れませんが、その「苦しむこと」にも凄く意味があると思います。真っ当に苦しむことはそれだけでもう精神的に何事かを成し遂げることだ、とフランクルが『夜と霧』の中で記したように苦しみによって精神は成長しているのだと思います。問題は苦しみとどう向き合うかで、逃げずに正面から向き合って苦しむことで自分を見つけていけば良いと思います。私はそんな大学生活を送ることが出来て本当にありがたいなと思いました。とても幸せ者だと思います。
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同期へ
俺は皆のことが大好きです。本当です。1年生の頃から粗相をしまくり、毎日ミーティングを重ね、踠き苦しみながら共に4年間戦ってきたことは一生の財産です。個性的で纏まりはあまりなくて、部室は動物園みたいで、でも皆仲間想いで、サッカーに対してはどこまでも真っ直ぐでした。最後の最後まで全力で悔いのないように駆け抜けよう。ヒーローは遅れてやってくる、なんて言います。最後まで自分達の立てたスローガンを体現し、笑って終わろう。
後輩へ
これからのソッカー部生活で成し遂げたいことはなんですか?今、その目標からはどれくらいの位置にいて、実現可能性は何%ぐらいでしょうか?貴方はその目標を本当に達成したいと思っていますか?
これからのソッカー部での生活を良いものにするか、悪いものにするか、全ては自分次第です。上手く行かないのは環境のせいではありません。環境は簡単には変えられませんが環境の捉え方なら自分自身の考え方によって変えることが出来ます。上手く行かないのは他人のせいではありません。他人が悪いと思うなら、まずは一度自分の行動を変えてみて下さい。成果から逆算して自分のやるべきことにフォーカスしてみて下さい。自分が影響を与えられないものにはエネルギーを使わず、影響を与えられるものだけに集中してみて下さい。
トップチームの皆。あと3節。俺達の生き様を見せよう。行動の一つ、プレーの一つに拘りを持ってやっていこう。
私はこれまで沢山の方々に支えられてここまでやってくることが出来ました。淺海監督、髙橋さんを初めとする社会人スタッフの皆様、サッカーの厳しさ、その先にある本気の楽しさ、そして組織と本気で向き合うことを教えていただきありがとうございました。宮内先生、荒井先生、小池さん、三浦さん、FOCSジムのトレーナーの皆様、怪我を乗り越えることは自分1人では間違いなく無理でした。沢山の時間を自分に割いて下さり、そしてケアやリハビリ、身体動作の見直しまでやっていただきありがとうございました。今の自分があるのは皆様のお陰です。
高校、大学で出会った友達、怪我したら心配の連絡をくれたり、メンバーに入るとおめでとうと言ってくれたり、復帰した時にはおかえりと言ってくれたり。掛けてくれる一つひとつの言葉がとても嬉しかったし、辛い時には乗り越える力になりました。FC東京U-18サポーターの皆様、高校を卒業してからも常に動向を気にして下さり、ありがとうございました。「新汰なる高みへ」自分にしか辿り着けない高みに向けてまだまだ突き進んでいきます。
そして最後に両親。まずはサッカーに出会わせてくれたことに1番感謝しています。これまでずっとサッカー中心の生活を送ってきて、調子の良い日も悪い日もいつも同じように接してくれて、自分に期待してくれて、そして暖かく見守ってくれてありがとう。試合会場に必ずと言っていい程、応援に来てくれたことは本当に力になりました。これからゆっくりと恩を返していきたいと思います。
また、明日は早慶サッカー定期戦があります。あくまでリーグ戦の1試合ですが、私達にとっては負けられない最後の早慶戦です。先人から脈々と受け継がれてきた歴史と伝統があり、部員にとっては憧れの舞台でもあります。慶應を背負って戦っているという実感を1番感じられる試合かも知れません、その分重圧も責任も他の1試合とは明らかに異なります。だからこそ、全員が本気でぶつかる必要があります。試合に出るかどうかは関係ありません。それぞれの場所で最高の瞬間を作り上げましょう。準備は出来ていますか?
次の担当は、はしけんこと橋本健人です。間違いなく、今年の慶應を象徴する選手です。彼の左足にはこの4年間で何度も助けられました。彼の右足にはキックフェイント以外の用途が見当たりません。1年の最初からリーグ戦に出て活躍してきた彼ですが、その分多くの悔しさを味わい、プレッシャーを背負っていたと思います。そんな彼を癒してあげたいと思い、ボディーソープを貸し続け、寒い日にはピステを与え、わがままに出来るだけ応えてきました。そんな戦友は最後に何を語ってくれるのか。楽しみです。期待してます。
《NEXT GAME》
10月24日(日)関東リーグ戦 第21節・第72回早慶サッカー定期戦 vs 早稲田大学
@味の素フィールド西ヶ丘 17:00キックオフ