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2025.10.30 引退ブログ

「感情」(金鶴航輝)

平素より大変お世話になっております。法学部政治学科4年の金鶴航輝です。

彩夏、紹介ありがとう。
ついこの間、太晟さんをカフェで見つけました。彩夏の指摘があったからか、少しだけ焦っている面持ちでパソコンに向き合っていて安心しました。彩夏に対する信頼は厚く、誰もが毛嫌いする金鶴ボトルを愛してくれていました。そんな選手ファーストで気が利く彩夏だからこそ、ベストショットを撮ってくれたのだと思います。彩夏も成城のカフェを好み、よく訪れるようですが、未だに見かけたことがありません。社会人になっても通い続けるつもりなので、いつか会えることを楽しみにしています。

引退ブログを執筆するにあたって、自らの素直な感情を投影することを心掛けました。拙い文章ではありますが、ご一読いただければ幸いです。

先日、約2年ぶりに怪我を負った。普段なら接触プレーで痛みが伴っても数日経ってしまえば和らいでいくが、奇しくも今回は違った。プレーする度に痛みは増していき、4年の意地という名の妙薬も使い果たし、とうとう離脱を決意した。あとどれぐらい全力でサッカーができるのだろう、そんな不安と痛みを隠しきれない重い足取りで病院に向かい、MRI検査を受けた。検査を実施している間はとても空虚な時間で、迎えに行かずとも4年間のソッカー生活が蘇ってきた。次第に検査に伴う大きな機械音は遠ざかっていき、気がつけば過去の記憶を辿ることに集中していた。それらは自らの感情と大きく結びついているものばかりだった。

大学2年次のB1 Iリーグ最終節。チームは降格の危機に瀕しており、この試合での勝利が自力残留の絶対条件。思い返せばシーズン終盤は苦しい戦いを強いられていた。1点リードで迎えた試合終了間際に劇的同点弾を決められ、勝ち点を取りこぼしてしまう、そのような試合が3試合も続いていた。それでも当時の4年生は逞しかった。結果に対する重責を背負い、それをピッチ内での気迫あふれるプレーで体現し、チームを牽引し続ける。その姿勢をプレーを通して隣で体感していたからこそ、自らもその背中についていきたい。そして4年生と喜び合いたいと思った。自分以外の誰かのためにサッカーをすることなど、これまでになかったし、それほど自分も強くなかった。ただ、このシーズンは違った。シーズン終盤6試合は全てスタメンとして出場し、毎試合ほぼ90分間プレーしていた。そして最終節もスタメンとして出場した。チームの責任をピッチに立つ者として背負う。自らの得点が試合の結果に直結する。これまでのサッカー人生で、最も高揚感と緊張感が入り混じるシチュエーションだった。結果は自らの決勝点もあり、祈願の勝利。今でも得点の瞬間の4年生の笑顔が忘れられない。

ソッカーを体現する4年生の背中を見て、自らも大きく成長したシーズンだった。しかしながら、あくまでもアンダーカテゴリーでの貢献。この経験を関東リーグの舞台で成し遂げる。そう強く意気込んでいたし、それだけ来シーズンの自分自身に対する期待も大きくなっていた。だからこそ、現実を突きつけられ、期待が失望へと変わっていくのは酷だった。

大学3年次のプレシーズン。新チームのTOPのボードに自分の名前はなかった。昨シーズンにB1で共に戦った同期の多くが昇格を果たす中での残留。悔しさはあったが、過度な焦りはなかった。またアンダーカテゴリーであっても活躍すればすぐに追いつけると思っていた。実際にそのチャンスはあった。ある日の紅白戦で4得点を決め、そのままTOPの紅白戦に出場。1アシストを記録した。これまでであれば昇格に向けた大きなアピールになっていたが、そう簡単にはいかず、結局B1で再びシーズンを迎えることとなった。TOPに昇格するためには、ただの好調ではなく、確かな実力が必要。それを痛感したからこそ、Iリーグの舞台で多くの試合経験を積むことで、より実力を蓄えられるだろう。気がつけば時期尚早に自らへの期待を切り崩し始めていた。Iリーグ開幕3試合、スタメンとして出場するものの、新たなサッカーを表現しきれず、思うようにいかない。チームの初勝利も遠のいていた。その中で迎えた早稲田戦。スタメンを外れてベンチで試合を見守る中、刀野コーチの戦術眼が炸裂、予想通りに相手GKのミスが生まれ、結果的にその試合の勝利のみならず、今後の戦績が好調となる転換点となった。それを機に自らの出場機会は激減。好調なチームに相反して、調子を落としていった。数か月ぶりに試合を観に来てくれた母をベンチから眺め続けることほど、惨めな経験はなかった。

自分が全くもって上手くいかない間にチームは2部優勝を果たし、来シーズンには1部の舞台で戦うことを決めていた。多くの同期がすでに活躍していて、自分の実力不足を痛感せざるを得なかった。これが正真正銘のラストシーズン。昨シーズンの借りを返そうが返すまいが、自らのサッカー人生の最終章。もう期待も失望もしない。目の前のことに全力で。地に足をつけて前進するシーズンにすると決めた。

大学4年次の沖縄遠征。10日間の厳しい練習をやり遂げ、TOPと紅白戦をすることを知った。ここしかない。シーズン開幕前にTOPに昇格する最後のチャンスだと悟った。そして同期といかに勝つかをホテルのラウンジで話し合い、試合に臨んだ。結果は自らの得点も含め、思い描いた通りの勝利だった。1年ぶりにサッカーが楽しいことを思い出した良い日だった。不意打ちザンビアと帰りのバスでの自分のプライドを守る戦いを除けば。帰ってきてから練習着の色は紺へと変わり、だいぶ遅れを取ったが関東リーグの舞台に向けた挑戦が始まった。しかし現実はやはり甘くなかった。TOPのプレースピードについていけない。ロンドでは、ボールロストを繰り返し、全てのグリッドを駆け回り、膝に手をついてメニューを終える。対人メニューでは、1対1で負け、2対2で味方と意図を合わせられない。15年間サッカーをしてきたとは到底言えないほど、自分のプライドは失われていた。センスがない。嫌というほど痛感した。だからこそ愚直になれた。これまで以上に自らの動画を見返し、仲間の指摘を受け止めていった。センスは知識からはじまる。そう気がついてからの日々は楽しかったし、実際にボールロストの回数は減少、対人でもイメージ通りに勝つ場面が増加していった。しかし足りなかった。関東リーグへの出場はなく、アミノ、続いて大臣杯とメンバーを外れた。誰よりも相手や大会名を叫んでフェードアウトしていくことに、何をしているのだろうかと感じる瞬間がなかったわけではない。ただ、それでも歩みを止めることはない。その理由は確かにあるし、同期が繋いできたブログを読み進める度に確固たるものになっている。

検査が終わる頃には、怪我による憂鬱な気分は晴れていた。そしてこの組織でサッカーをする魅力を再認識した。目標は違えど、何かを求めて門を叩いた者同士が本気で向き合い、130人誰一人欠けることなく同じ方向に進む。その相乗効果による力こそが慶應の強さ。4年間を通して体感してきた。

大きな決断を下して組織に全てを捧げるグラマネがいる。それぞれ苦悩を抱えながらも切磋琢磨し続ける仲間がいる。選手を支えてくれるマネージャーやトレーナーがいる。毎日誰かの努力をこの目で見てきた。それゆえ、自分ではない誰かのストーリーに心を動かされる。

確かに、この組織の全てが自分にとって好都合なわけではない。時には自分の感情を押し殺さなければならないこともある。ただ、その感情を惰性で流さずに、向き合うことで初めて組織の魅力、ひいては自らの弱さを知る。

サッカーエリートでもなければ、悠々自適に過ごしてきた自分にとって、ソッカー部はパラダイムシフトを起こしてくれた。だからこそ、最後は歓喜の感情に揺さぶられたい。とことん戦い尽くして底力を見せつけよう。

最後にこの場をお借りして感謝を述べたいと思います。

社会人スタッフの方々
多大なるご指導をいただきありがとうございました。
中町監督、センスのない選手を指導することは大変なご苦労があったことと存じます。中町監督が志向するサッカーは、これまでのサッカー人生で最も刺激的でした。依然としてその片鱗しか掴めていないかもしれませんが、最後まで足掻き続けます。
淺海前監督、2年次のプレシーズンをTOPで過ごしたことは自分自身のソッカー部でのキャリアで貴重な経験でした。荒削りな自分の可能性を見出していただきありがとうございました。
刀野コーチ、刀野チルドレンとして未だに大きな成果を挙げれず申し訳ございません。刀野コーチが自らの得点で喜ぶ姿を再び見るために残された時間も奮起し続けます。

先輩方
先輩方の姿勢やご指導があってこそ、今の自分があると確信しています。不器用な自分にたくさん寄り添っていただきありがとうございました。

後輩達
自ら絡みに行くタイプではない自分に絡んできてくれてありがとう。そんな可愛い後輩達の活躍を心から楽しみにしています。

同期
最高に濃い4年間をありがとう。個性豊かな人しかいなくて、そんな仲間と過ごす日々は充実していました。最後まで死力を尽くして、この代の強さを証明しよう。

両親
何不自由なくサッカー人生を送らせてくれてありがとう。
父、ここまで何でも挑戦させてくれる人はいないと思います。その寛大さと信頼に応えることが常にモチベーションになっていました。
母、毎朝3:45に作ってくれる朝ご飯や、栄養バランス満点の夜ご飯、常にサッカーを第一に考えてくれる思いやり、全てが活力になっていました。
ここで感謝を伝えきることが到底できないほど、たくさん支えてもらいました。今後の社会人としての行動で恩返しを少しずつさせてください。

お待たせしました。ここからは特にチームを牽引してきた選手達が続きます。しかし、その前に忘れてはいけないのは、その選手たちが最大限に力を発揮するために、欠かせないアナリストの存在です。永田は自らの睡眠時間を切り詰めて、資料を作成してくれています。彼の表現力は一級品で、おそらくそれがKAMOのモデルを勝ち取った要因となったのでしょう。
裏方からチームを支える永田が、どんな思いを綴るのか乞うご期待です。

《NEXT GAME》
11月1日(土) 関東リーグ戦 第20節 vs 東洋大学 @慶應義塾大学下田グラウンド 14:00キックオフ

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