2025.10.28 引退ブログ
「心を動かす」(竹島彩夏)
平素より大変お世話になっております。
総合政策学部4年マネージャーの竹島彩夏です。
太晟、紹介ありがとう。
早速ですが訂正です。私が生き急いでいるわけではなく、太晟が急がなすぎです。大体締切30分前でも焦ってないし、締切1分前まで最寄りのミスドで手とり足とり教えたオンデマンドではギリギリまで鼻歌を歌っていました。電車では絶対人がいない方の席を譲ってくれ、エスカレーターでは下に乗るデキる男ですが、恐らくもう少し急いだ方が良いでしょう。純太も私もいない来年のSFC生活が本当に心配です。
さて、「拙い文章になりますが」が本来であれば決まり文句のブログですが、私の場合は本当に拙い文章だと思います。暇な方がいたらお手隙の際に読んでいただけたら幸いです。
世の中には「義務・責任タイプ」と「モチベタイプ」の2種類がいると思う。
後者は人に心を動かされ、それが原動力となり仕事にあたる人間であるのに対し、前者は自身が置かれている状況を義務として捉え、責任を持って仕事にあたる人間であると認識している。
私は極端な前者だと思っていた。人に心を動かされることなんてほとんどないと思っていた。やることはやることで、感情が介入するとむしろ厄介だと思っていた。
サッカーとの出会いは小学生の時。テレビで観ていた日本代表戦でGKがPKを止めた瞬間だった。それ以降、試合観戦が楽しくて楽しくて仕方がなかった。応援するチームも選手もできた。サッカーを通じて出会う人、景色、組織、全てが輝いていた。
ここまでサッカーに魅了されていた私にとって、高校の入学式の日に隣の席の子に誘われた女子サッカー部は光り輝いて見え、入部に迷いはなかった。体験入部に行った日にはもう入部届に名前を書いていた。
しかし、光り輝いていたのはほんのちょっとの間だけだった。思うように伸びない技術、どれだけ走っても追いつかない体力、そして何よりも、負けず嫌いさが圧倒的に足りなかった。
幸いにも仲間には恵まれていた。0-21で負けても、開始10秒で失点しても逃げ出さなかったのはチームメイトのお陰だった。
ただ、それだけでは上手く行かないのがサッカーであり、スポーツだと強く実感した瞬間がある。
とある試合の序盤にバックラインの誰かが大きく蹴り、相手のゴールラインギリギリをボールが転がって行った。思ったよりも砂がスピードを吸収し、誰かが走ればチャンスになりそうだったあのボールに、私が1番近かったのにも関わらず、走って行く勇気がなかった。最後まで諦めずに直径約22cmの白と赤の球体を追うだけのはずだったのに、それができなかった。
それまでなんとなく、諦めない気持ちや負けず嫌いさが足りないな、と朧げに感じていた矢先でのこと。「たったその瞬間だけか」と思う人もいるかもしれないが、私にとってはこれが自分の“弱さ”を実感した瞬間だった。そして何よりも、この自分の状態を悔しいと思う気持ちすらなかった。
この時、いつの間にか自分が「感情」を捨ててサッカーをしていたことに気付いた。だからこの状況を悔しいとも思わないし、負けず嫌いにもなれない。
つまり、最初の人間の2タイプに当てはめると前者で、「女子サッカー部に所属している」から「サッカーをする」ことが義務であり、責任だと思っていた、ということである。
これこそが、私の弱さだった。
本来であればこの状況でさえも、悔しい、悲しい、もっと上手くなりたい、などのリバウンドメンタリティに変換しないといけないのだろう。しかし、私は何も感じることができなかった。だから高3の7月に女子サッカー部を引退し、「女子サッカー部に所属している」というステータスがなくなった瞬間、果たすべき義務も責任もなくなり、とてつもない恐怖を覚えた。
そしてその恐怖は高校の卒業式後に再びやってきた。大学生活を考えれば考える程、ここまで自分を魅了したスポーツを手放すことが怖く、気付いた時にはソッカー部にマネージャー希望のDMを送っていた。当時の自分にとって、ここが義務と責任を獲得できると思った場所だった。
その後の入部面談では「サッカー観戦が趣味であること、高校時代にサッカーをしていた経験から、今度は私が支える立場に立ちたいと思い、マネージャーを希望します」なんてことを言っていた。本当は「選手としてはもう逃げたけど、サッカーに関わる道以外に進むことが怖いです。どうか拾ってください」と言うべきだったのだろう。
けれど、それはこの部には合わないことはすぐに分かった。なぜなら、他の部員はプロ志望、サッカーが好きという気持ち、高校でやり切れなかった後悔、早慶戦・関東に出たいといった理由で入っているから。私みたいな低い次元で逃げた弱い人間はどこにもいなかった。
そして数ある選択肢の中で選ぶこの部は、苦であるかどうかは人それぞれだが、決して楽ではないと思う。
睡眠時間を削って作業やMTGをする早慶戦前や遠征期間、通知が来た瞬間にLINEを開くために常に携帯を肌身離さず持っていること、何時何処でもPCを持ち歩き、やることが降って来た瞬間にデザリングに繋げて立ち止まって作業すること、ミスが絶対に許されない環境、4:15に耳元で鳴り響くアラーム。
そして何よりも、「ソッカー部のマネージャー像」に正解がないからこそ、試行錯誤しながら模索し続けることが求められる日々。
自分が携帯を見ていない間に何か起きたらどうしようと思うと何時に寝るのが正解かも分からない時もあったし、何度確認してもミスがあったらどうしようと不安になり、夜中に目が覚めてもう一度メンバー表を見直すこともあった。何をしても自己満足なのではないかと自信がなくなる時もあった。
選手程では全くないが、何をしても良い大学生活の中で選ぶには楽ではないと思う。
それなのに、辛いと思ったことがないのは、この生活が嫌ではないどころかむしろ手放したくないとさえ思わせてくれるのは何故だろうか。
下田に行く度に元気を貰え、どこでやっている試合でも観に行きたいと思わせてくれるのは何故だろうか。
苦手な早起きを毎日してでも、ソッカー部のマネージャーになって良かったと思えるのは何故だろうか。
それはこの部にいる人たち、全員が私にとって羨ましい存在だからだと思う。思い返すとこの4年間、一度もみんなのことを羨ましいと思わなかった瞬間はなかったと、断言できる。
みんなの負けず嫌いさが、サッカーへの情熱が、どんな時でも諦めない心が、目標に向かう姿勢が、辛いことがあった時に乗り越える力が、全てが本当に羨ましかった。
もしできるのであれば、自分もみんなみたいに強くて、負けず嫌いで、一つのことに向き合い続けられる人になりたかった。諦めない人になりたかった。どんなに辛いことがあっても立ち向かえる人になりたかった。
どんなに苦しくても辛くても、サッカーが好きで毎朝練習に来て、それぞれが成長し続けている。
試合のメンバーに入ったら広いピッチを走り続け、ゴールを決めるために、そしてゴールを守るために全力を尽くしている。メンバー外の選手は悔しさを押し殺して、仕事や応援をしている。怪我人は辛い顔を見せずに練習のサポートをしている。スタッフ陣は常にソッカー部のことを考えて動いている“強い”人たちで、見る度に自分の力不足を実感するとともに、自分の歯車を加速させてくれる。
これでも、私に見えているものはソッカー部のほんの一部にしか過ぎないと思う。けれど、弱い自分だからこそ、この景色を見ることができているのだとも思う。
ありきたりな言葉にはなってしまうけれど、数ある選択肢の中でどんな形からでも、どんな方面からでもサッカーに向き合い続けているみんなのことが誇らしいし、心底羨ましいと思う。
ここで最初の話に戻したいと思う。
今、「人に心を動かされることはないと思っていますか?」「自分がやることに感情が介入すると厄介だと思いますか?」と聞かれたら、私は間違いなく首を横に振る。
それはソッカー部に関わる人、全員が私に与えてくれた財産だと思う。
恥ずかしながら、入部前の私には勝ちの嬉しさも分からなかったし、負けの悔しさも分からなかった。
自分に与えられた仕事があるから、それらをやるために自分がいた。それをやることができるのであれば、自分でなくても良かったのだと思う。
けれど、そんな私は本当に恵まれた機会を沢山いただき、素敵な景色を数え切れないくらい見ることができた。
同期のゴールで勝った初帯同のIリーグ。
闘う選手たちを間近に見たアミノチーム付き。
選手はキツくても諦めずに走り続け、学生スタッフ陣は睡眠時間を削ってチームのために動いていた合宿遠征。
同期のゴールで昇格が決まったプレーオフ。大怪我を負った同期の復帰戦チーム付き。同期の関東デビュー。
関東、Iリーグ、新人戦など様々な試合で撮ったゴール後のハイタッチや勝ちフォト。
11年ぶりの全国出場。2部優勝。初めての1部。
今年だけで見ても、関東、新人戦、Iリーグで活躍する選手たち。沖縄でラインに飛び込んでまでもザンビアに入ろうとする選手の姿。同期の活躍で上り詰めたアミノ。早慶戦に同期のゴールで勝ったこと。2年連続の全国出場。
全てを書こうとするとキリがないが、全てが新鮮だった。
勝った時は嬉しくて、勝てなかった時は悲しかった。試合を観て感動できるようになった。みんなが、ソッカー部での生活が、私が今まで失っていた感情を取り戻してくれた。
私がここで見ることができた景色は、逃げた弱い自分だからこそ輝いて見えて、決して手放したくない心動く瞬間だった。
ただ、思い返す程、もっと自分にできたことがあったのではないか、叶えられていないことがあるのではないかという後悔が募る。自分のキャパをどれだけ超えてでも、するべきことがもっとあったはずだった。けれどそれは、もしかしたら自分の自己満に過ぎないのかもしれない。その判断がつかない自分に対しても後悔が募る。もっと自分にキャパと能力があったら、「100%ソッカー部のため」と言い切れる強いマネージャーになれたのかもしれない。後輩たちにはこんな後悔をして欲しくないと切に思う。
けれど、この後悔も含め、私に与えてもらえた感情という財産だし、今私がマネージャーが天職だと思えている理由だと思う。みんなが連れて行ってくれた舞台が、見せてくれた景色が、導いてくれた結果が、全てが今の私に繋がっている。
私がずっと思っていた「逃げ」は、弱い私に天職を教えてくれるためのものだった。
もしもう一度ソッカー部生活をやり直せるのであれば、余裕のある完璧なマネージャーになりたい。誰よりも仕事ができて、誰よりも強い“ソッカー部のマネージャー”になりたい。自己満足ではなく、チームのためだと言い切りたい。
自分だけでは見ることができない景色を見せてもらった分、自分にできることはそれくらいだと思っていたから圧倒的な後悔として残っている。だからこそ、残りの期間は全てを出し尽くしたい。どの要望にも全部応えたいし、私が持っている200%を尽くさせて欲しい。自己満かもしれないけれど、それが大事なものを取り戻してくれたみんなへのせめてもの恩返しだと思っています。
ここでふと、この間ボトルに水を入れながら「ブログ書くことないんだけど」と後輩たちに言ったら「サッカーやりたくてもどかしかった、とか書かないんですか?楽しみにしてますよ」と言われたことを思い出した。
ごめんね、私はそんな素敵な人ではありません。選手は高校だけで十分でした。弱いから今ここでマネージャーをしています。それでも、ここがあって良かったと断言できます。みんなも引退する時にそう思えていると良いなと、心から思います。
これまでお世話になった方々へ、一部ではありますがこの場をお借りして感謝の気持ちを綴らせていただきます。
社会人スタッフの皆様
まずは自分を受け入れてくださり、本当にありがとうございました。淺海前監督のもとで過ごした最初の2年間があったからこそ、今の自分がいます。
中町監督と沖縄合宿のラスト3日目くらいにTOPパスコン中にお話したことが、テソンさんに夏にお話いただいた言葉が、最後の1年間の原動力になりました。
駒野さんは定例を毎週開催していただきありがとうございました。1点訂正させていただきますが、同期は不仲ではありません。ただ話が長いのと良く喋るのがいるだけです。
最後までご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。
先輩方
数々の変なあだ名をつけられながら沢山のことを学び、ここまで来ることができました。引退したら改めて感謝を伝えさせてください。
同期のみんな
みんなの活躍を4年間見ることができて本当に嬉しかったです。最高の景色を何度も見させてくれてありがとう。最後までよろしくね。
マネ部屋周りのみんな
来美、南深、悠紗、心愛、絢英、彩良、海優、磯﨑、由依、伊織、翔
「彩夏さんは引退しないですよ」って言ってくる子ばかりですが、引退します。「分かんないことあったら会社に電話しますね」もお断りです。やばい新入社員だと思われます。「早慶戦の袋詰めを手伝って欲しいです」はリアルすぎて厳しいです。時給が出るなら考えます。でも、みんなのことは変わらず応援しているので自分らしく、前を向いて頑張ってください。苦しくなったらご飯にでも誘ってください。何がなんでも定時退社して最短ルートで飛んで来るからパソコン見ながら待っててね。
じな、夏斐、優羽、由祐、空閑
自分らしく、健康には気を付けて頑張ってね。連絡さえくれれば、体に良さそうな食料を持って駆けつけます。
後輩のみんな
何故か呼び捨てだったり、未だに気まずそうに会釈してきたり、人のことをケロロ軍曹と呼んだり、毎日勢い良く頭を下げて挨拶をしてくるよく分からない後輩たちも沢山いますが、全員のことを心の底から応援しています。
そういえばエドサに名前を出せって言われた気がしてきました。SFC高勢も、大学SFC勢もみんな可愛い後輩たちです。怪我には気を付けて頑張ってね。
縦割りの優羽、金井、太久人。それぞれの立場で輝いてね、ずっと変わらず応援しています。
あと、人のことをボスと呼んでくるギリ失礼な皆様、辛くなったらいつでも連絡をください。地方勤務になったとしても、苦手な飛行機に乗ってでもすぐに飛んで来ます。
これからはみんなのこと、一サポーターとして、速報で、配信で、そしてたまには現地で応援させてください。
SFC女子サッカー部
コーチの皆様、ご指導いただきありがとうございました。
特に蓮さん、選手以外の選択肢に迷いなく背中を押してくださりありがとうございました。お陰で学生生活をサッカーで彩ることができました。サッカーに関わり続けることを選んで良かったです。
美桜
高校の入学式の日、女子サッカー部に誘ってくれてありがとう。今年の早慶戦の運営で女子部との連携がスムーズだったのも美桜のお陰だと思っています。高校時代、ピッチ内で大迷惑を掛けた分、美桜の主務業を少しでも楽にできていたら良いなと思います。残り1試合、全力で全力を楽しんでね。
日和
書くなって言われたから手短に。怪我と病気には気を付けて、日和らしく頑張れ。日和なら大丈夫。
最後になりましたが、OB・OGの皆様、保護者の皆様、日頃よりソッカー部に多大なるご支援ご声援を寄せてくださる全ての皆様に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。最後まで温かい応援をよろしくお願いいたします。
振り返ると、これまで支えてくださった皆様のお陰で自分の決断を尊ぶことができているのだと実感します。ここに書き切れなかったことは、これからこっそりとお伝えできるように頑張ります。
残り、関東は4試合、IリーグはB2の1試合、新人戦は次勝てば全国。
最後まで、ソッカー部のマネージャーとして一瞬一瞬を目に焼き付け、駆け抜けたいと思います。
お待たせしました。次のブログは金鶴航輝です。
彼の紹介文を書くにあたって同期にエピソード提供を求めたところ、ここには書けない話ばかり伝えられてしまいました。ギリ使えそうなのは近所で86を乗り回すことが趣味ということくらいです。
4年経ってもいじり方の正解は掴めないままでしたが、彼のゴールに立ち会う機会も多く、特に一昨年の国士舘戦で撮った写真は4年間を通してもベストショットの一つです。
様々な感情を乗り越え、慶應のエンブレムを背負って戦う彼がどのような想いで4年間を過ごしたのか。駅前のカフェで真剣にブログに向き合った彼がどのような言葉で4年間を綴るのか。乞うご期待です!
《NEXT GAME》
10月29日(水)関東リーグ戦 第19節 vs 流通経済大学 @RKU フットボールフィールド 18:00キックオフ
