2024.11.15 引退ブログ
「優勝のその先へ」(山口紘生)
平素よりお世話になっております、商学部商学科4年の山口紘生と申します。
一葉、紹介ありがとう。
最初に紹介文を読んだとき、誰よりも尊敬する一葉から自分の4年間を認めてもらえたことが本当に嬉しく、感動しました。でも、感慨に浸っている時に、人の感情を無くした友香から「なんでこんな褒められているの?」と水を差され、台無しにされました。最低です。
一緒に過ごした濃密な時間の中で分かったのは、一葉がこの部で一番心優しい人だということです。発言の一つひとつには、組織への愛と仲間への熱い想いが込められていて、その優しさに何度も支えられてきました。一葉には、きっと私には想像もできない苦悩や葛藤があったと思います。それでも組織を愛し、行動で示し続けてきた一葉こそ、本当の「ソッカーの体現者」だと思います。
最後まで、一緒に戦おう。胴上げ待っててね。
重く厚みのあるブログリレーのバトンを一葉からアンダーハンドパスで受け取るとともに、ついに明日、サッカー人生最後の試合を迎えました。何を書くべきか迷いましたが、私には一葉のような感動的なブログが書ける気はしません。なので、この4年間を振り返りながら、込み上げてくる想いを素直に書き留めようと思います。ほんの少しでも、明日の試合に向かう部員の励みになれば幸いです。
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今日に至るまでの4年間、自分の力では到底なし得ないような、かけがえのない経験ばかりをさせてもらいました。それは紛れもなく、組織に生かされ、周りに助けられ続けた結果です。誰がどう見ても、自分はソッカー部で一番の幸せ者だと思います。
そんな恵まれた4年間で、たった一つだけ後悔があります。
それは、「サッカー選手」としての自分から目を背けてきたことです。
4年前、私がソッカー部の門を叩いたのは、単なる偶然からでした。もし高校の先輩方がソッカー部に居なかったら、もし八木さんから電話越しに強めの圧をかけられなかったら、この部に入ることは無かったかもしれません。他の同期のような高い志を持っていた訳でもなく、色んな縁が紡がれていった結果、流れに身を任せて入部届を提出しました。
そんな曖昧な決意とは裏腹に、ソッカー部への愛は日に日に強まっていきました。練習にかける熱量、自己を顧みない献身性、仲間と真剣に向き合う組織文化、このチームのどこを切り取っても、そんな素晴らしいところばかりが目につきました。気がつけば、高校時代に築き上げた「美しく勝て」というエッセンスも捨て去り、誰も追い付けない矢のようなクリアを連発しながら、ソッカー部員として逞しく育っていきました。
この最初の1年間は、間違いなくソッカー部人生の転機でした。関東最高峰の舞台で出場機会をいただけたことや、10年ぶりの早慶戦勝利の喜びをピッチの片隅で味わえたこと、何よりも偉大な先輩方と共に過ごせたことは、私にソッカー部員としての自覚をもたらしました。しかし、そんな充実した1年目は、非情にも最終節で降格が決定。大好きな先輩達の泣き崩れる姿を目にしたとき、自分の中に確固たる覚悟が芽生えました。
強い慶應を取り戻して、絶対に1部に復帰させる
そのためにも、残りの3年間の全てをソッカー部に捧げよう
日大グラウンドからの帰り道、1人心に誓ったことを、今でも覚えています。
決意新たに臨んだ2年目。
長く苦しいシーズンを戦い抜きましたが、入れ替え戦に敗れ、3部に降格しました。またしても、チームを勝たせることはできませんでした。試合後、チームを先導してくれた先輩たちや、プロを志してこの部を選んでくれた後輩が、嗚咽しながら泣いていた光景は、今でも忘れられません。
自分への失望が込み上げる中、その日のうちにビデオを見返しました。本音を言えば、もうサッカーなんてやりたくなかったです。ただ、その時の私にとって、そんな負の感情さえどうでもよく、ソッカー部を壊してしまったという現実や、先輩たちの4年間に報いることができなかった後悔だけが、自分を突き動かしていました。
迎えた3年目。
「お前がやらなきゃ、誰がやるんだ。」
TOPチームの基準を示せていなかった私に、友峰さんは何度もこの言葉をかけてくれました。その言葉によって、「他の誰よりも基準を示し、チームに貢献しなければならない」という強い自覚が生まれ、必死で責任を果たすことだけを考えました。
当時は、また自分のせいでチームが負けるのではないかという恐怖に支配され、2年間の後悔を何度も思い出しながら、弱い心を奮い立たせてピッチに立ち続けました。勝利を収めても、義務を果たせたことに安堵するだけの日々。でも、それで十分だと思っていました。自分の役割を忠実に果たすことこそが、私の存在意義だと信じていたからです。同窓会を楽しむ同期を横目に、成人式すら欠席し、ソッカー部にすべてを捧げました。
その年、入れ替え戦で昨年のリベンジを果たし、2部に復帰。先輩達が繋いでくれた1部復帰への道を、自分が必ず受け継ぐ。そんな覚悟を胸に、主将に立候補し、最後のシーズンに挑む決意をしました。
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そして迎えた、最終学年。
主将になったものの、私は組織が向かうべき方向や、ソッカー部員としてあるべき姿について、何一つ答えを持ち合わせていませんでした。そこで、一度立ち止まり、これまでの3年間を振り返って「ソッカー部とは何か」と考えてみました。無い知恵を振り絞って頭を悩ませましたが、結局、納得できる答えには辿りつきませんでした。
それでも、唯一分かったことがあります。それは、ここが「サッカーをするための組織」であり、我々が「サッカー選手」であるという、揺るぎようのない事実です。
「サッカー選手」という観点で考えると、果たして自分の3年間は正しかったのか、自信が持てなくなりました。今まで、ソッカー部の美しさは、一人ひとりの自己犠牲によって成り立っていると思っていました。ただ、サッカーをする喜びよりも義務感が先行し、盲目的に組織に尽くしてきた毎日が、どこか息苦しかったのも事実です。自ら好んでやる分にはいいとしても、主将としてその姿勢を同期や後輩にも強要し、組織全体を窮屈にしてしまうことは本当に正しいのか。何より、今まで必死に守ろうとしてきたソッカー部の伝統やロマンとは、そんな押し付けがましい利他性のことなのだろうか。
サッカーを始めたばかりの頃は、ただただボールを蹴ることが楽しくて仕方がなかったのを覚えています。先のことなど何も考えず、雨の日も雪の日も公園に通い、ボールが見えなくなるまで夢中で練習を重ねました。大下と田中あたりから、「嘘だろ!」とヤジが飛んできそうですが、本当です。
苦しいことや上手くいかないことが増えていく中で、気づけばあの純粋な気持ちを忘れていたように思います。いつの間にか、将来を見据え、サッカーをする過程に意味を見出すことが大人になることだと勘違いしていました。たとえ、どれだけサッカーが下手でも、プロにはなれなくても、私たちはサッカー選手です。「好きなサッカーを、好きだからやる」という自分の原点だけは、決して忘れてはいけないものだと、やっと思い返すことができました。そして、自分のために戦い、誰かのためにも戦えるようになって初めて、ソッカー部での4年間が真に価値あるものになるのだと思います。
そうして初心を思い出したとき、視界が晴れたような気がしました。断じて、チームへの想いが薄れたわけではありません。3年前のあの日から、自分の責任を果たし、愛するソッカー部を1部に戻すという覚悟は変わっていません。唯一変わったのは、サッカー選手としての誇りを持ち、その過程を存分に楽しもうと決意したことです。また、全員がその姿勢を当たり前のように持てるチームにしたいと、心からそう思いました。
そんな新たな使命感を抱いて走り抜けてきた今シーズンは、18年間のサッカー人生で最も充実した時間でした。主将の重圧や苦悩をテーマにカッコイイ文章を書きたかったのですが、正直そんな気持ちはほとんどなく、ただ仲間への感謝を胸に、選手として成長する喜び、愛する組織を背負ってピッチに立つ喜びを噛み締めました。
この1年間を振り返れば、思うような結果が出ず、自らの未熟さに打ちひしがれる瞬間は何度もありました。また、果たしてどれだけの部員がソッカー部での活動を心から楽しめていたのか、自信を持って答えられないのも事実です。しかし、それでも皆と共に、何よりも大切なものを見失わないように丁寧に積み重ねてきた時間が、先日の昇格へと繋がったのだと信じています。そして、昇格の瞬間に溢れ出た喜びは、もし自分のためだけに戦っていたら、決して味わえなかったものだと強く感じています。
今年は、自戒の念を込めながら、下級生達に「自分のためにサッカーをしてほしい」と伝え続けてきました。後輩達には、どれだけ道のりが長くても、常に上を目指してほしい。環境や才能を言い訳にせず、明治や筑波の選手に対抗心を燃やしてほしい。慶應のプライドを全面に押し出し、早稲田を圧倒してほしい。そして何より、いついかなる時も、サッカーを心の底から楽しんでほしい。
本気でサッカーに向き合いながら、仲間と苦楽を共にし、個人と組織の間で葛藤を繰り返していく。そうして初めて、「誰かのために戦いたい」と思える瞬間が訪れるのだと思います。自分自身の外側をいくら探しても、誰かのために戦わなければいけない根拠や、辛いことから逃げてはいけない理由は、見つかりません。あるとすれば、それは「自分が逃げたくない」と心から思えるかどうか。それだけだと思います。
自分自身を突き詰めたその先で、きっと自然と「誰かのために戦いたい」という想いが芽生える瞬間がやってくる。そんな4年間を、1人でも多くの部員に過ごしてほしいと心から願っています。
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「2部優勝・1部昇格」まで、あと一勝。
シーズン前には、はるか遠くにあった目標も、今や手の届くところまできました。優勝をかけた一戦を前に、部員の皆はどんな想いを抱いているでしょうか。
メンバーに選ばれなかった部員の中には、明日の試合に自分事として挑めない人もいるかもしれません。高校時代、応援席から試合を眺め続けた自分にも、同じような苦悩がありました。だからこそ、そんな皆に「チームのために声を出せ」と無理強いするつもりはありません。ただこの一年間、全力で挑戦し、必死に戦ってきた自分自身に対して、最大の敬意を払ってほしい。そして、最後までその誇りを胸に、共に戦い抜いてほしい。
その想いを背負い、結果で応えることが、主将としての私の最大の役割だと感じています。憧れ続けた慶應のヒーローには、程遠いかもしれません。それでも、優勝をかけたこの大一番で、全力で試合を楽しむ姿勢を後輩たちに示し、慶應のソッカーを体現します。
ここまで、「自分のためにサッカーをすること」の大切さを繰り返し伝えてきました。それでもやはり、最終戦を前にして湧き上がってくるのは、チームへの愛と仲間への感謝の想いです。4年間分の想いを込めて、明日はチームのために、何があっても走り続ける。共に戦ってきた仲間のために、最高の90分間を捧げる。
どのような結果に終わろうと、今日までの日々に後悔は一切ありません。それでも、明日の試合に勝つことでしか得られないものが、確かにある。
それぞれの想いを胸に、積み上げてきたものを信じて、全力で戦おう。
そして、必ず全員で優勝を掴み取ろう。
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最後になりますがこの場をお借りして、サッカー人生を通じて出会い、支えてくださった方々への感謝を綴らせていただきます。
社会人スタッフの方々
4年間、愛のある指導をしていただき、ありがとうございました。
ソッカー部での経験を活かし、社会に貢献する人材になるべく精進します。
淺海前監督、どんな時も信じて起用し続けてくださり、本当にありがとうございました。友峰さんが築き上げてくださった土台の上で1部昇格を果たすことができ、ようやく3年間の恩を少しだけ返せた気がします。
私自身は愛に溢れた指導だと確信していますが、具体的なエピソードはコンプライアンスの観点から割愛させていただきます。ご了承ください。
中町監督、かけていただいた言葉に何度も励まされ、サッカー選手としても人間としても多くを学びました。サッカー人生の最後に中町さんのチームでプレーできて本当に幸せです。最後優勝を決めて、いつもクールな中町さんを胴上げするのを、部員一同楽しみにしています。
茅野
自分に持ってないものをたくさん持っていて、密かに尊敬していました。でも、茅野が持ってないものは、自分が大体持っている気もします。予想以上にバランスの良い組み合わせだったし、一緒にチームを引っ張って来られてよかった。
最後に明日、チームを勝たせよう。そして、いつか一緒にプラント作ろうね。
一葉、凌万
散々偉そうなことを書いたけど、部員がサッカーに集中できるのは全て2人のおかげです。2人がいなかったら、確実に昇格することはなかったし、そもそもチームとして崩壊していたと思います。グラマネ決めで2人に誓ったことを、最後に証明します。
ついでだけど、豪もありがとう。本当についでだけど、勝木と鬼丸もありがとう。
先輩方
先輩方への恩返しが、この4年間の大きなモチベーションでした。今年、1部復帰を果たし、少しでもその恩に報いることができていれば嬉しいです。
ただ昇格を決めた日、思ったより先輩方からのメッセージが少なかったことには驚きました。おそらく、優秀な先輩方は「まだ優勝していないから」という気遣いから控えてくださったのでしょう。明日の試合後は、お祝いのメッセージ、食事のお誘い、気兼ねなくお寄せいただければ幸いです。
後輩達
皆とサッカーをすることが何より楽しかったです。最後に優勝を皆で掴み取ろう。
この1年間、純太がクラシカルなストッパーへと成長し、惠風はより一層素晴らしいソッカー部員となり、大下が自ら下級生指導をするようになり、古金谷は掃除ができるようになりました。本当に、頼もしい限りです。
今後は川名を中心にチーム作りが進んでいくと思いますが、最近の潤太の全体把握や、相場のスタッフ気取り、田中の必死なマネジメントなどを見ていると、なかなか甲乙つけ難いです。本当は五十嵐以外の全員の名前を出したかったのですが、あまりにも長くなってしまうので割愛します。とにかく、皆が1部の舞台で躍動することを、心から楽しみにしています。
みんな、頑張れ。健人、一番頑張れ。
家族へ
18年間、何不自由なくサッカーをさせてくれて、本当にありがとう。
いつしか父は戦術を理解し、母は事前に相手選手をリサーチするほどに応援してくれていたことには、感謝しかありません。兄もサッカーは全く興味ないはずなのに、何度も試合に足を運んでくれてありがとう。最後、優勝するところを見にきてください。
少しずつにはなるけど、必ず恩返ししていきます。
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最後に、同期へ
入部したばかりの頃、入部予定者の出身校が他のどの大学よりも見劣りしていて、皆で不安がっていたのを覚えています。そこから、2度の降格から這い上がり、皆でなんとか1部までたどり着いたことを、心から誇りに思っています。海と山を走り続けた日々も、1日に27時間くらいミーティングした期間も、この代だから乗り越えられたと思います。
4年間、本当にありがとう。
今シーズンも本当に色々あったけど、泣いても笑ってもあと1試合。
絶対に、この代で優勝したい。
自分たちの4年間を証明するために、ソッカー部の未来のために、一葉と凌万の決断を正解にするために、最後に4年の意地を見せよう。
《NEXT GAME》
11月16日(土) 関東リーグ戦 最終節 vs日本体育大学 @日本体育大学横浜・健志台キャンパスグラウンド 14:00キックオフ