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2023.12.01 引退ブログ

「矜恃と覚悟」(笹龍平)

明日、ついに2部参入プレーオフ。昇格をかけた重要な一戦。
相手は因縁の相手青山学院大学、決戦の地は1年前に涙を流した浦安競技場。

部員の皆は今、どんな想いを抱えているだろうか。
かつてない大一番を前に高揚している人も、とてつもない不安と緊張に苛まれている人も、いつも通りの人もいるだろう。

俺は今、この4年間で最も熱く、それでいて冷静に明日を迎えようとしている。

正直怖さがないと言ったら嘘になる。
不安をあげたらキリがないし、どんなに努力を重ねても結果に恵まれないことがあるのも理解している。

ただそれでも
あの日からずっと渇望し続けた昇格が目の前にある状況に気持ちが昂り、不安があるからこそ頭は冷静に“自分の役割”に徹しようという強い覚悟が胸にある。

得体のしれない不安と根拠のない自信の狭間で苦しみ、
「何かを変えなきゃいけない、他に何かできることはないか」とその“何か”を追うことで
目の前の恐怖をかき消すように過ごしていた1年前とは違う。

今自分がやるべきことはいたってシンプル。
選手が100%の力を発揮できるような環境を作り、メンバーをピッチに送り出すこと。
選手を信じ、勝つための“振る舞い”をすること。
そして、その振る舞いをチームに求め続けること。

このブログを通じて皆には、1年間どういう想いで過ごしてきたのか、明日俺らは何を成し遂げようとしているのか、そしてそのために自分ができる役割を整理して欲しい。
気持ちは熱く、頭は冷静に。

「一心不乱に自分のできることを全うする」

監督が示してくれた言葉、
そして勝ち点42を積み重ねたこのチーム、仲間、そして何よりも1年間戦い続けた自分を信じて。

「グラウンドマネージャーになるという決断は正しかったのか」
「サッカーを辞めてまで得たものは何か」
グラウンドマネージャーとしての2年間、常にこの問いが自分にぶつかった。

担っている仕事を一つひとつ見てみると、誰にでもできる仕事ばかり。何なら自分よりも質高くこなす人の方が多いはずで、選手のようにプレーで直接チームに勝利をもたらせるわけでもない。

突然の環境の変化に精神がすり減り、自分を忙しくすることで立派になった気がして、とにかくもがき続けた1年目。
愛する先輩たちに支えられながらなんとか駆け抜けたそのシーズンの終わりは、あまりにも残酷だった。

創太と2人体制で始まり、同期と何度も長いMTGを重ねながらチーム作りをした最終学年としてのプレシーズン。
無力と未熟さを日々痛感し、“自分の価値”と“原動力”に悩み苦しんだ。

シーズンが始まってからも、喜びと後悔が繰り返し押し寄せ、上手くいかないことの方が多かった。

この部活に限ったことではないだろうが、ソッカー部での4年間には多くの決断が転がっている。
本気でサッカーに向き合う環境を求め、ソッカー部の門を叩くという決断。
チームのために、同期の想いを背負ってスタッフになるという決断。
隣を見てみれば、チームのためにFPからGKに転向する決断をした部員だっている。
ポジション変更や怪我との向き合い方もそうだ、いつだってそこには決断が伴う。

誰にでも、自身の決断に懐疑的になり、歩んできたその道とこれから歩もうとする道が正しいのか分からなくなってしまう、自分に自信を持てなくなってしまうことがあるだろう。

当たり前のことだが、何かを決断したということは、別の何かを捨てたわけで、その“何かを手放した自分”を後悔することなく信じ続けることは簡単ではない。

俺自身も今シーズン、その葛藤、弱さと向き合い続けた1年間だった。

2022年12月3日
2部参入プレーオフ 亜細亜大学戦後、涙を流す先輩、同期、後輩を目の当たりにする中、不思議と涙は出なかった。決して悔しさがなかったわけではない。未だにあの試合の映像を見返すこともできないくらいだ。だがそんなことよりも、自分がここで崩れたらチームが沈んでしまうという、危機感や責任感の方が圧倒的に上回った。正確には、すぐに始まる長いシーズンを考えると前を向かざるを得ないほど追い込まれた状況だったのだと思う。

「ここにいる全員の思いを背負い、俺らがチームを引っ張って必ず2部に戻す。」

きっと同じような感情になっていたであろう創太と誓い合ったその瞬間から始まったシーズンだった。

しかし蓋を開けてみると、そんな覚悟や自覚が一人歩きしてしまう苦しいシーズン。
苦しかったというのも烏滸がましい程に、自分の未熟さがその原因だった。
どんなに気持ちを固めても、覚悟を口にしても、結局は“そのつもり”になっていただけ、甘さが露呈した。
誰よりもチームとその結果を背負い、文字通り人生をかける社会人スタッフの方々には到底敵わず、同じ視点に立つなんて愚か、言い返す言葉などない程に指摘をいただく日々が続いた。

うまくいかなくなった時の自分はめっぽう弱く、
ピッチで躍動する選手を目の当たりにし、羨望と嫉妬の狭間で揺れ動き、捨てたはずの選手としての未来に押し潰されそうになった。
選手にそんなことを言えるはずもなく、勝手に孤独を感じることさえあった。

「グラウンドマネージャーになるという決断は正しかったのか」
事ある毎にぶつかるこの問い。

自分でサッカーを辞めることを決断したくせに、こんな悩みで足踏みしている自分が情けなかった。

それでも
どんなに自分の弱さが露呈しても、失敗を繰り返しても
ここまで来ることができたのは
決断を下した自分自身だけは裏切りたくないと言う意地と、それを正解にしようと歩んできた道のりを縋るように信じることができたからだと思う。

“サッカーを辞めた自分を正解にすること”
それが確固たる原動力だった。

“失敗を糧に成長していくこと”
それが何にも勝るやりがいだった。

未熟さを受け入れるだけの器を持ち、何度も挑戦し、また失敗する。それでもまた顔を上げて挑戦する。

学生スポーツは失敗の場だ。

学生スポーツを通じて学んだのは
何にも負けない強さの根源はその人の弱さにあるということ。

弱さと向き合うことでしか得られない経験を積めることが学生スポーツの価値だ。

不安と逃げずに向き合えたから、抜かりない準備ができる。
負けと逃げずに向き合えたから、結果を変えるだけの努力ができる。
失敗と逃げずに向き合えたから、自信を持って挑戦できる。

いくら「覚悟を決めた」と口にしたってそれは結局気持ちの問題で、いきなり能力が上がるわけではない。
相変わらずやっている仕事は誰にでもできるもので、自分の力でチームに直接勝利をもたらせるほど大層なものではない。

最後の最後まで失敗続きだ。

それでも
グラウンドマネージャーへの挑戦は俺だからこそできたことだし、悩み苦しみながらもグラウンドマネージャーとしての誇りを持って、毎日チームのために奮闘できるのは俺の価値である。

こんな経験、選手を辞めてなかったらできなかっただろう。
あの時自分が下した決断を誇りに思う。

現状に不満を抱えている人、
決断に懐疑的になっている人、
原動力を見失い、流すように毎日を送っている人、
入れ替え戦を前に、得体のしれない不安と怖さに駆られている人へ。

自分がどんな決断の上に立っているのか、今一度見つめ直して欲しい。
きっとその決断は誰にでもできるものではなくて、それぞれが強い想いを持って下したもの。
みんなだからこそできたもの。
そこに誇りを持って欲しい。

そして
自分の弱さと向き合い続けること。恐れることなく何度も挑戦すること。
その決断を正解にするべく歩んできた道を信じること。

文字で書くのは簡単、いつでも自分の弱さから目を背けたくなる。
1人じゃ乗り越えられないことだってある。

だからこそ明日、俺の生き様をもって示す。
自分が同期と創り上げたチームで、仲間と共に昇格という結果を掴み取ることで示す。

どんなに苦しいことがあっても、理不尽なことがあっても、失敗が続いても、
自分の決断と歩んできた道を信じ、弱さと向き合いながら一歩一歩進むことで、
絶対に乗り越えられると。
決断を正解にできると。

大学3年時に下した“サッカーを辞める”という人生最大の決断。
入部当初思い描いていたものとは全く別物の、挑戦と可能性に溢れた世界。
その中で日々痛感する自身の力不足と弱さ。
サッカーへの未練や後悔、答えのない矛盾。
自分が選んだ道への疑問。
背負えば背負うほど重くのしかかる責任。

本当に悩み苦しんだ4年間だった。

そんな4年間も明日で最後。
たかが90分、されど90分。

いつも通りの、それでいて最上の準備をし、選手をピッチに送り出す。
今やるべきことに集中し、“一心不乱”に戦う。

後に振り返った時に、最後の最後まで自分が成長できたと思えるように。

悩み苦しんだ分だけ、多くの成長とやりがいに恵まれ、素晴らしい4年間だったと胸を張って言えるように。

今苦しむ後輩たちに、勇気を与えられるように。

自分を育ててくれたこのチームへの恩返しとして、
“昇格”と“生き様”を残し、
このチームを去る。

必ずだ。

そして
この4年間で得たことを武器に、社会に出ても挑戦し続ける。
さらに成長した姿で、慶應義塾体育会ソッカー部に恩返しができるように。

その矜恃と覚悟を、このブログに綴る最後の自分の想いとしたい。

 

 

4年生がここまで紡いできた引退ブログリレー。
それぞれが自身の覚悟や成功、弱さや苦悩を曝け出したブログは、4年間もがき続け、逃げずに向き合い続けたみんなにしか書けない唯一無二のものだったと思う。
4年生としての価値であり役割、そして責任。

「伝統を繋ぐ」

ピッチ内外において、うまくいかないことの方が多かったかもしれない。
それでも、最上級生としての責任と逃げずに向き合い、最後までもがき続けるみんなは最高にかっこいい。

同期へ
3年半前、コロナ禍真っ只中で対面とリモートを併用しながら始まったソッカー部での生活。
正直細かくは思い出せないほどに長くて、でも今の自分をソッカー部なしには、同期の皆なしには語れないほどに濃い時間を一緒に過ごせて、本当に幸せです。

グラウンドマネージャーになるという決断を迫られた時、その決断の先にある未来を想像するととてつもない不安に襲われ、自分だけがその世界に立つことに恐怖と孤独に近い気持ちを感じていました。
それでも
「組織にとってかけがえのない存在になりたい」
「挑戦と可能性に溢れた環境に飛び込みたい」
という自分の気持ちに正直になり、選手を辞める決断をできたのは、間違いなくみんながいたから。

「笹の決断を正解にする」

その言葉に何度も救われた。
最後まで未熟な俺を支えてくれてありがとう、想いを一緒に背負ってくれて、共に戦ってくれてありがとう。

必ず昇格しよう。

 

 

最後になりますがこの場をお借りして、これまでのサッカー人生を通して出会い、支えてくださった方々への感謝を綴らせていただきます。

社会人スタッフの方々
日頃から厳しくも暖かいご指導をしていただきありがとうございました。
グラウンドマネージャー生活を通して、自身の弱さと向き合いそして成長することができたのは、学生のことを第一に考え、常に妥協なく高い基準を求めてくださった社会人スタッフの方々の存在があってこそです。
監督がよく仰っている
「ソッカー部での4年間では人生を学べる」
という言葉。
その言葉を胸に刻み、この4年間で得たことを糧に社会に貢献する人材になるべく尽力していきます。

両親
今まで支えてくれて本当にありがとう。
選手時代もグラウンドマネージャーになってからも、ホームアウェイ関係なく毎試合応援に駆けつけてくれる2人の存在は、間違いなく原動力でした。
2人にとっては突然の決断で、サッカーをしている姿を見せられなくなってしまったこと、申し訳なく思います。
それでも、選手を辞めてグラウンドマネージャーになって良かったと、心の底から言えるようにここまで頑張ってきました。
あともう少しです。
全てぶつけてきます。
最後の勇姿、目に焼き付けてください。

秀太君、蓮君、三浦君、横幕君、景君、祐二朗君
ついに、ここまで来ました。
あの日から1年。あとひとつです。
試合後にみんながくれるメッセージが何よりの励みでした。
あの地で青学に勝利し、昇格という景色をみんなと一緒に見たい。
最高の瞬間を共有したい。
必ず、成し遂げます。

健翔
4年間ありがとう。
紹介でも書いてくれていた通り、下級生の頃から長い時間を共に過ごし、選手時代もスタッフ時代も共に戦ってきました。
“韋駄天ハードワーカー”やら“熱男”やら“うんちく王”やら、様々な肩書きを持つ彼ですが、やっぱり一番は“最高の主務”です。
最後までよろしく。

創太
大変、お世話になりました。
2年間、嬉しいとか悔しいとか眠いとか腹減ったとか色々な感情を共有することができて、創太との時間はとても濃く楽しいものでした。
創太がいてくれたから、自分のやることをシンプルに考えられたし、強みを発揮する環境を整えられたと思っています。ありがとう。
そんな創太との半同棲生活ももう終わりかと思うとなんか寂しいです。
あと1日、我々らしくパッションとロジックを最大限に発揮して、チームを勝利に導こう。

一葉、凌万
グラウンドマネージャーという役職の素晴らしさを2人に伝えること、体現してみせること。
それが俺の使命だと思って、今日まで過ごしてきました。
去年秀太君たちとそうだったように、創太とそうだったように、様々な感情や経験を共有できるように多くの時間を共に過ごしました。
ただやっぱり言葉で伝えられるものは少なくて、失敗も多く常に理想的なグラウンドマネージャーであることもできなかった。
だからこそ、明日必ず昇格を決め、サッカーを辞めた決断を正解にする姿を、そんな生き様を2人に示したい。
今シーズン、苦しみながらも向き合い続けたこのチームが昇格を手にする瞬間を共有したい。
少しでも、2人が自分の決断を正解にするための手助けができればと思っています。

明後日からの新シーズン、きついことも悩むことも多いでしょう。そんなことばかりのシーズンかもしれません。
一葉、諦めずに向き合い続けること。
凌万、ぶれずに歩み続けること。
色んなことを共有しながら、戦い続けてください。

2人が創り上げるチームを、本当に楽しみにしているし応援しています。

頑張れ。

雄大から始まった同期の引退ブログリレーもついに最後、主将山本献(4年・國學院大學久我山高)が登場します。
いつでもふわっとしていた方が力を発揮できるタイプだと思うので、ここで彼への熱い想いを綴るのは控えようと思いますが、これまで誰よりも関東のピッチに立ち多くのものを背負ってきた彼だからこそ、最後はとにかく楽しんで欲しい。
楽しみながらも、逞しくプレーする献はめちゃくちゃかっこいいです。
存分にらしさを発揮して欲しいなと思います。
勝って、共に昇格という最高の景色を堪能しよう。

《NEXT GAME》
12月2日(土) 2023年度 関東大学サッカーリーグ戦 2部参入プレーオフ決定戦 vs 青山学院大学 @ブリオベッカ浦安競技場 11:00キックオフ

 

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