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2023.10.25 引退ブログ

「衛星」(平山はな)

このブログを読んでくれている、いつかの貴方へ

 

自分の人生にとって、何より大切なことは何?

どうしようもなく自分の心が動かされる時、と聞かれて思い浮かべる光景は何?

周りの目、損得、過去未来、そういうの関係なく、自分が誰かに「やめろ」と言われてもやめられないほど、苦しくても続けてしまうほど、好きでたまらないものは何?

 

貴方は、今、この質問に答えられますか。

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| 出会い

2020年5月4日
今でも忘れられない、私がソッカー部に出会った日。そもそも体育会に入る気は少しもなかったし、サッカーというスポーツにも、ソッカー部という組織にも、特別な思い入れはなかった。ただ、自分の高校同期の誕生日が5月1日で、その子の兄がソッカー部で主務をやっていたから、何となく頭に浮かんだのかもしれない。
あの日の夜、私は普通に家にいて、きっかけも理由も覚えていないけど、ふと、今まさに私が書いているこの部のブログリレーに出会った。この日、私は5年分の引退ブログを読んだ。ざっと100人以上。初めて、興奮で眠れないという経験をした。人ってこんなにどきどきするんだ。そう思ったこと、あの感覚は、今でも鮮明に思い出せる。

「生まれて初めて、これだと思うものに出会いました。部活に対する、サッカーに対する皆様の熱い思いに、こんな世界があるのだと、昨日は自身の高揚で一睡もできませんでした。」

次の日の朝、私はソッカー部に一通のメールを送った。マネージャーの募集はとうに締め切っていたし、説明会も終了していたけれど、ここで諦められないと思った。家の近くを流れる川辺を歩きながら文章を打ち、何度もメールを読み返した。公園のベンチで、震えた手で送信ボタンを押したこと、今思うと懐かしくて仕方がない。この日から、私の大学生活ほぼ全てだと言って良い、ソッカー部人生が始まった。

 

|忘れたくない記憶

この4年間、本当にたくさんのことがあった。もう思い出せないことも、きっと数えきれないほどある。経験と忘却の連続の中で、様々な感情に揉まれていることを、自分自身で実感できる日々。そんな日常の中で、これからも心に残しておきたいと思う瞬間が、忘れたくないと思う出来事がある。それは必ずしも、勝利した時や喜びの感情だけではない。むしろ、そうでないことの方が多いかもしれない。

2年前の早慶戦。10年ぶりの勝利、それもアディショナルタイムで逆転勝ちするという劇的な試合の場に立ち会わせてもらった。最後に得点を決めたのは、大学3年生の時からプロとして活動している、ソッカー部のヒーロー。彼の叫びも、あの時の歓声も、色濃く印象に残っている。でもそんな彼も、1年生の時の早慶戦では、前日にベンチ外を告げられるという経験をしていた人だった。彼はその年の早慶戦前夜、暗い下田グラウンドで、ただひとりボールを蹴っていたという。そのことを知った時、常に成功し続けている人などこの世にいないのかもしれないという感覚が、確かな実感を持って私の心にのしかかった。
この日、ソッカー部のヒーローが、慶應応援席に座る全ての人にとってのヒーローとなった裏で、試合に出られず、仕事をしながら泣いていた人がいる。悔しさを抱えながら、誰よりも最後まで片付けをしていた早稲田の部員がいる。そういうことが、私は忘れられない。

2022シーズン。プレーオフという、勝つか引き分けで残留、負けたら降格という、重い、本当に苦しい意味を持った一戦で、私たちは負けた。2年連続でのリーグ降格。正直、誰もが負けるとは思っていなかったと思う。全てのリーグ戦が終了してから、プレーオフを行うまでの1ヶ月間、できることは全てやったと思う。全員で合宿に行き、ミーティングを重ね、練習を重ね、部員全員が勝利を祈っていた。初めて、総力戦の体現を見た気がした。それでも負けた。結局、結果が全て。スポーツの世界は残酷だ。

でも、プレーオフがあったから。あの日があったから知ったこと、経験できたことがあることもまた事実なのだ。
それまでどんなに苦しく悔しい試合も、周りの部員たちが泣いていても、一度も泣いたことがなかった。泣けなかったし、泣くつもりもなかった。そんな資格は私にはない、そう思っていた。マネージャーと選手では、圧倒的な距離がある。マネージャーは、少なくとも私は、この部にいらない、いなくてもいいとずっと思っていたし、正直、今この瞬間もそう思う。最後まで私は無力だった。勝利に貢献できることはない。でもプレーオフの日、涙が止まらなかった。泣く泣かないは一つの指標ですらない。それでもみんなが泣いている姿が、あの空気が心底苦しくて、悲しくて、辛かった。初めて、少しは部員でいてもいいのかもしれないと思えた。

忘れないと思える景色を見ることができたこと。プレーオフ全体集合の後、私にまで声をかけてくれた先輩、後輩、同期。「いいチームになったよね、ありがとう」とわざわざ私に伝えてくださった監督。遅い時間まで残って誰かの背中をさすっていた人がいること。気づいたら、いつも通り積み込みをしていた人たちがいること。

プレーオフの一戦は浦安の会場で行われた。ディズニーランドを横目に見ながら会場まで歩いたあの日。観客席から試合を応援しながら、空の広さに驚いたあの時。浦安の空は、淡く、広く、刻一刻と姿を変えていた。何よりも、美しかった。闇がないと光ることができないように、苦しみを知っているからこそ、分かることがある。感じるものがある。私たちにとっては悲劇でも、相手校にとっては喜劇の一戦。結局、全ての出来事は意味づけなのだと思う。

 

|私とソッカー部

私がこの部に入った理由は紛れもなく、引退ブログを読んで心が動かされたこと。4年間を過ごして、こういう言葉が紡ぎ出せる。こういう経験ができる。何より、こういう感情を抱ける人が集まっている。私もそんな人たちと一緒にいたいと、そう強く思ったから。人に惹かれて入ったこの場所で、私は今も人のおかげで生きることができている。

マネージャーをしていて一番良かったことは、みんなを遠くから等しく見える位置にいることができたことだ。どの立場の人にも同じだけ関わることができるのがマネージャーだった。私が見ることができたのはその人のほんの断片的な側面でしかないけれど、それでもその断片は私にとって本物だった。

3年生の時の山中合宿。誰よりも早く配膳して、誰よりも荷物を運んで、誰よりも仕事して、私にも声をかけてくれた一葉に本当に支えられた。
よく自主練するところを見かけていた秀太が、関東リーグのピッチ上で声を張る姿に、いつも元気をもらった。
2年生の時、早慶戦の下見に来た雄大を見た日から、学連としての彼をずっと信頼している。
Iリーグで、キャプテンマークを巻いているひでの背中を見るのが好きだった。
毎週律儀に私にリサーチ資料を送ってくれる慈英は、私の想像をはるかに超えてこの部に身を捧げているのだと思う。日吉記念館の地下1階で慈英と話す時間は、私の原動力となった。
高校生の頃、学校に来れない時期もあった瑞貴が試合に出ているのを見た時、誰かに褒められているのを聞いた時、勝手に満ち足りた気分になっていた。
1年生ながら些細なことに目を配り、気づいたら合宿所にいる石田の存在は、私が頑張りたいと思える一つの理由だった。
毎日海辺を走る惠風は、試合の前夜、何を考えて海を眺めているのだろう。
毎節のIリーグが終わる度、横幕さん(R5卒)は運営グループLINEにありがとうを送ってくれる人だった。その言葉を受け取るごとに、とても大事なことを教わっている気がした。
優秀で聡明な創太と二人で下田から帰った日、創太が想いをこぼしてくれたことは、これからも忘れないと思う。
グラマネ笹のまっすぐな言葉は、いつも泣きそうになるくらい心に響いた。グラマネの仕事は誰にでもできることだって本人はよく言っているけど、笹は間違いなく唯一無二のグラマネだった。

早慶戦で、個人的に特にお世話になったア式の羽田さん、陸人さん、慧一、英吉、怜於。一緒に仕事できるのは本当に嬉しくて、本当に楽しかった。私のマネージャー人生において、鮮やかな記憶を彩ってくれた人たち。この部のマネージャーだったから出会えたことを誇りに思う。

好きと感謝が伝えられないということに悩むほど、この部の人たちが好きで仕方ないみさきのことが好きだった。
私がもっていないものをたくさんもっているそひょんは、いつもいつでも私のことを褒めてくれる人で、それが本当に嬉しかった。
自分の弱さを自覚した上で、強くあろうとするましゅんはすごくかっこよかった。
見えないところで、いろんなことに、たくさんの人に手を差し伸べられる勝又のことを一番尊敬しているのは私だと思う。

 

「愛せよ。人生においてよきものはそれだけである。」

 

作家、ジョルジュ・サンドの言葉だ。ただ好きだから、ただ頑張りたいと思える人たちがいたから、というだけの4年間ではなかった。そんなに単純な話ではない。

それでも思う。きっと私の4年間は、この言葉の一端を知るための時間だった。
ここに名前をあげた人は、この組織で出会った人のほんの一部にしかすぎないし、ほんの一部の経験にすぎない。たわいもないことで誰かのことを好きだと思える出来事が、本当にたくさんあった。

この部にいたから出会えた人がいること、見られた景色があること。代わりの効く私は、この場所で、代わりの効かない時間を生きた。多くの美しい瞬間に触れた。それだけでもう、息が詰まるほど十分だった。

 

|願い

この組織にいる全員が、サッカーが好きだからこの組織にいるとは思わない。そうでない人もいるだろう。それでもきっと全員が、本気でサッカーと関わることを続けたいと思ったから、あるいはサッカーから離れられなかったからこの場所にいる。これは一つの愛であると思う。どんな理由であれ、何かしらの理由があるからこの部に居続けているのだ。部員は毎年100人以上。様々な立場の人が、様々な形でこの部に関わっている。

トップの選手にはトップだからこそ得られる苦しみがあり、アンダーカテゴリーの選手には、アンダーカテゴリーであるからこそ得られる苦しみがある。スタッフにはスタッフの、マネージャーにはマネージャーの苦しみが存在する。
誰かを理解したと断言することは簡単だ。でも、それは時に暴力と等しい行為になる。他者には、自分には持ち得ない他者性がある。一人ひとりの行動には、人生には、何かしらの背景があり、想いがある。サッカーの上手さに順位はつけられても、たったひとりの人間であることに変わりはない。

自分の人生にとって、何より大切なこと。それは私にとって、この部のみんなが幸せでいられることだった。

どうしようもなく自分の心が動かされる時。それは私にとって、みんなの感情が溢れ出た瞬間を見た時、サッカーを楽しんでいる時だった。

周りの目、損得、過去未来、そういうの関係なく、自分が誰かに「やめろ」と言われてもやめられないほど、苦しくても続けてしまうほど、好きでたまらないもの。それは私にとって、この部の部員たちといることであり、部員のみんなそのものだった。

この邂逅は、きっと私の人生の財産だ。

大きなことは何一つ成し遂げられなかった。自分自身の限界を知り、弱さを自覚した。
これからはその弱さを乗り越え、これまで出会った全ての人に感謝し、世界に還すために生きることをここに誓う。

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どんなきっかけで、何を目的にこのブログを開いてくださったか分かりませんが、ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
親愛なる同期、風間(ましゅん)からバトンを預かりました、総合政策学部4年の平山はなと申します。

ましゅんとは、この4年間で本当に多くの時間を共にし、話をしてきました。とにかく一緒にいてくれたことに心から感謝しています。心優しいから、これから苦しいこともたくさんあるんじゃないかって思ってるけど、いつでも呼び出してくれたら話は聴くよ。私はましゅんの未来がとても楽しみです。
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最後にひとつだけ。

貴方が苦しい時、しんどい時、私にはそれを解決することも、代わりに何かすることもできません。この世界を生きていく中で、最終的に自分を救えるのは自分しかいないと思っています。だから、最後は自分が自分を肯定し、認めてあげられるようにならなければいけない。でもそう言われても、それってすごく難しいですよね。こう言いながら、私にもそれができません。
そんな時、私はいつもそばにいてくれる人に救われてきました。
ましゅんに、勝又に、みさきに、そひょんに。可愛くて頼もしい後輩マネージャーたちに。
ふと周りを見渡した時、きっと貴方にもそういう人がいるはずです。だから、どうか一人だと思わないでください。
そして私は、もしこの文章を読んでくれている人が私の知り合いだったら、貴方の良いところが必ず言えます。知り合いでも、知り合いでなくても、私は貴方と一緒にいることができます。話が聴けます。これだけは自信をもって言えます。

生まれてから22年間、ただひたすら運と縁に恵まれ続けてきた人生でした。だから誰かに還すことが私の生きている意味だと思っているし、それが私の使命だと思っています。

自分のことさえ分からなくなるこの人生で、知り尽くすことのできないこの世界を生きていくのなら。だとしたら私は、目の前のひとりに寄り添うことに自分を使いたい。
頑張れている時に得られる苦しみよりも、頑張れない時に得られる苦しみの方が何倍も苦しい。だとしたら私は、そんな苦しみを抱えている人の存在に気づける人間でありたい。

間違いなく、貴方には貴方にしかない良さがあります。
どうか貴方が、この世界を生きる一人ひとりが、それぞれの光の中にいられていることを心から願います。

 

次回のブログは古川廣太郎(4年・慶應義塾志木高)が担当します。
今年は幸運なことに古川のゴールシーンに居合わせる機会が多く、特別記憶に残る試合を見させてもらえました。本当にありがとう。
山中合宿中のある夜、彼に、サッカーが楽しいか、という問いを投げかけたことがあります。
本人は覚えていないと思いますが、満面の笑みで楽しいと答えてくれたことを、私は忘れられません。あの時古川がサッカーを楽しいって言ってくれたことがとても嬉しかった。ありがとう。
思えばこの4年間、些細なことで古川にはたくさん笑わせてもらったけど、きっと彼も彼なりにいろんなことを思いながら過ごした4年間だったと思います。そんな彼が書く文章を読むのがとても待ち遠しいです。楽しみにしてます。
あ、あと早くご飯行こうね。

《NEXT GAME》
10月28日(土)関東リーグ戦 第19節 vs 中央学院大学 @慶應義塾大学下田グラウンド 14:00キックオフ

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