2023.10.20 引退ブログ
「星のカービィ」(金瑞賢)
平素より大変お世話になっております。直井から卒業ブログのバトンを受け取りました、文学部4年マネージャーの金瑞賢(キムソヒョン)です。直井は私が勝手にMB(マブの略語)という役職をつけ、普段から頼っております。根っから優しくて、包容力がある彼は、一緒にいるだけで安心感をくれるし、気分を良くしてくれる能力があります。そんな直井にすら、好きであればある程叩いたりと当たってしまう私の悪い癖を理解してもらえなかったですね。私に叩かれてきた皆様、ここでお詫び申し上げます。愛情たっぷりのパンチでした。ごめんなさい。
いよいよこのブログで熊澤、直井、金という地獄文学部メンツのブログリレーを終えます。1つ告白しますと、私は部内の文才皆無代表者として本日のブログを相当負担に感じていました。まだ来日して丸3年も経っていない外国人です。意味の分からない日本語が出てきても優しく見守り楽しく読んでいただけますと幸いです。
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最近1年生から「ソヒョンさんってなんでソッカー部に入ったんですか」と聞かれる回数が多くなった。多分大体の先輩・同期・後輩もそう思っていたでしょう。入部の理由はシンプルで「マネージャーになったら毎日サッカーを観れるのか!サッカーに関われるじゃん!」という未経験者らしい浅い発想、それだけだった。だから正直、正式入部した直後には「あれ?」という気持ちだった。それでも辞めずに活動を継続してきた理由は、厳しい組織生活で社会人になる練習ができるとか、みんなのことが好きになり自分の生活で1番の優先順位になったからということも勿論あるが、日本語を含めてみんなより劣っている自分自身から逃げず、自分が選んだ選択に最後まで責任を取るためという理由が大きかった。
入試地獄とも呼ばれる母国、韓国で生まれ育ち、朝6時半に起床後登校して8時から16時まで授業、17時半から22時まで補習または自習が必修で、外出禁止の全員学生寮の高校に自分から進学した。厳しい生活かつ成績と入試への心理的プレッシャーがもの凄い環境で競争者たちとの24時間共同生活は、毎年200名で始まる同期が転校や辞退で卒業する頃には170名になる結果を生んでしまう。(しかし残念ながら、ソヒョンはあんな環境でもルームメイトたちと毎晩こっそり夜食パーティーを開き、一発芸とダンス対決をする楽しい日々でした。)もちろん、試練もあった。2年生の時はクラスメイトの自殺を止め毎晩部屋に遊びに行って親友になったこととか、3年生の時は受験50日前に車に敷かれる事故に巻き込まれたこととか(車ってもの凄い重いです!)。それでも第1志望の大学に進学したし、大学ではキラキラしている留学生活が待っていると信じていた。うん、その時までは。
当然これを読んでいる皆さんにとっては何1つ共感のできない考え方や生き方だろう。ただ、今までとそれほど変わっていない環境で、接したことのないタイプが1人だけいる状況の皆さんと、完全に新しい外国の環境で、接したことのないタイプ100人超に囲まれた私の感覚はだいぶ違う。入部後は今まで経験したことのない形式の上下関係、規律の厳しさと丁寧さ、淡々とした姿勢と冷静な思考が当然だという人たちばかりだった。残念ながら当時の私は来日して6ヶ月も経ってない立場で、当然学ぶのも仕事をするのも遅かった。上から好かれるはずのない面倒臭い新入部員。そんな自覚があったからこそ落ち込んでいたし、当時の私が言えるのは「すみません」、「申し訳ございません」、「失礼しますが」しかなかった。誰も分からないだろう、帰り道の電車の中で泣きながら部員表にふりがなを書き、ひたすら名前を丸暗記していた私を。20年間の自分が否定される気持ち、言葉では表現しきれない孤立感、常に劣っているという不安。その中で私は思った。ここで生き残るためには今までの自分とは別れ、一から新しく学びこの組織で求められている姿勢を身に付ける必要があると。それが実現できた理由は全て同期マネージャーのお陰である。何を聞いてもすぐ教えてくれるし、私が理解するまで待ってくれる。ズレているところは合わせてくれるし、何よりもこの全てを面倒臭いと思わず同期だから当然やることだと思ってくれる。私に目線を合わせてくれて、本当の同期として受け入れてくれた人たちだ。
同期マネージャーからの温かい支援で仕事ができるようになり、普段の日常業務から早慶戦や延世定期戦まで、自分なりに少しは組織に貢献できるようになったと思った。少なくとも迷惑を掛ける存在からは成長できたことに安心した。自分を成長させてくれた組織に自分の力で、貢献できることってこんなに嬉しいことなんだと思った。そして4年になった春、選手とは違って後輩たちにひたすら担当の仕事を引き継ぐ、力のない最上級生として私は何ができるか悩んだ。私が見つけた答えは「当事者意識」を持つこと。つまり、選手の立場に立って当事者になることだった。「ドリンクを飲む選手の気持ちを分かるため」と答えると周りからは笑われがちだが、これがフットサルの授業を取った理由だし自分なりに真剣に取り組んだ。結果は予想を超える程の大収穫。選手にとって水分補給がどれほど大事なのか肌で感じられたこともあるが、何よりもその場では私も選手でいられた。自分が体を動かして、アクションを起こして、結果に繋げる。一瞬だろうが、スポーツの楽しさと、プレーに対しての自分の下手さでチームに貢献できない悔しさが感じられた。選手にとってプレーをするのがどれほど楽しいことか、そしてアンダーカテゴリーの選手の悔しさとはどんなものかが伝わってきた。だからこそいつもプロの姿勢で頑張っている選手と向き合うために、プロのマネージャーの気持ちで頑張った。1人の部員として私も選手と同じだと思った。しかしそれは、私の勘違いだった。
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私は慶應義塾体育会ソッカー部のマネージャーである。男子部か、女子部かの前に私はマネージャーだし、組織に役に立つことであれば、選手がいるところであれば、どこでもついていく気持ちである。女子部の韓国遠征では、同性だからこそもっと近くで選手の深い悩みや事情を聞くことができた。「選手はここまで考えているし、こんなに本気で取り組んでいるんだ。」自分に学びの機会をくれた女子部には今でも感謝している。
そして、近くにいたからこそ気付けた。
「マネージャーってここまでなんだ。」
選手の基本ルーティンになる「練習と試合」。その行為のためだけでも選手たちは集まるし一緒に時間を過ごす。日々の練習の中で、感性を研ぎ澄まし、同じ感覚を共有する。それだけでもお互いの関係性は深まる。一方マネージャーとは、既にいる相手にひたすら合わせる役割である。マネージャー同士でもお互いを理解するには時間をかける必要があるし、チームワークよりは個人タスクの連続になる。何よりも、試合の準備をするのも、プレーをするのも、挫折するのも、喜ぶのも、全てを変えることができるのは結局選手だけができることである。私はマネージャーとして、その一部を共有してもらっているだけ。義務を履行するのも、権利を主張するのも、選手だけができるものなんだ。
たらればの仮定は基本ない私だが、これに気づいたときは辛かった。私って、選手として当事者でいた方が幸せだったのではないか。キツくても良い、そのキツさも一緒に共有しながら笑えるから。そもそも選手同士の関係性は、私には辿り着けないところ。うん、マネージャーってここまでなんだ。
それでも私は「大学生活、いや海外にまで出てきた留学期間、マネージャになったことを後悔してない?」という飽きる程聞かれた質問に対して、胸を張って答えられる。
「ううん、全く後悔してない。」
高校を卒業してからの私を、成長させてくれたのはソッカー部である。何でもない、ただの大学生、しかも外国人。そんな私をとにかく受け入れてくれた組織だ。私はマネージャーとして部の運営側に携わってきたし、沢山仕事をする機会をもらった。サッカーボールを蹴る方法も知らない中で試合の運営に携われたし、高校生の頃遠く感じていたサッカー観戦が日々できている。早慶戦という歴史の深い大規模な行事運営に参加することができたし、日韓の大学同士の国際試合でも自分が持っている能力を活かす機会をもらった。そして何よりも、私の20代そのものである皆さんに出会った。私が長い間母国に戻らなくても、寂しくなかった理由は皆さんと忙しく過ごした日常のお陰だろう。皆さんと日々の練習で、試合で、遠征でかいた汗は旅行より特別だったし、皆さんと撮る集合写真は母国の小中高同窓会とか家族と過ごす祭日より大事にしていた。そして、私は入部の前とはだいぶ違う自分になっていたんだと気づくことができた。
未熟な私に、少しでも関わってくれた先輩、同期、後輩の皆さんに心から感謝している。そんな皆さんに、勝手なお願い。それはソッカー部在籍の皆さん一人ひとりが「星のカービィ」になること。
「星のカービィ」でカービィは他のモンスターをそのまま丸呑みして、相手の能力を吸収する。ポイントは相手のモンスターと同じ形になるのではなく、自分なりに解釈して変わった形でスキルを発揮するということ。自分の形は変えずに相手の武器を自分も身につけること。
好きでも嫌いでもこの組織に残って自分の存在を証明すると決意した限り、この組織の良い面を、部員の良い面を、自分のものとして吸収してください。まさに星のカービィになってください。もちろん、組織に合わせる過程の中で最初の自分とは異なっていきます。それでも、自分が置かれた環境に集中して何かを得ようと努力し、周りの人から刺激を受け続けて、良い面を吸収しようとするカービィは最強。私はいつもカービィになりたいし、部員のみんなもカービィになれると強く信じている。部員のみんなは強いし、本当に大切な存在なので。
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後輩選手へ
絡みの荒い、かつ他の女子マネージャーからは言われなさそうな厳しい指摘を行う先輩で、ごめんなさい。後輩選手の皆さんのお陰で、救われたことは数え切れない程多いです。本当に感謝していますし、後輩の皆、本当に好きです。
そんな皆さんにはお願いしたいことがあります。私の後輩マネージャーたちを、本人からフィードバックを求めてこない限り、評価しないでください。その評価で下級生マネージャーのやる気が落ちることだけは避けたいです。私は彼と彼女らを守っていきたいです。評価は先輩マネージャーの私たちがやります。
後輩マネージャーへ
先輩としての仕事ができない4年生で申し訳ございませんでした。人それぞれ「優しい」の基準は違うだろうけど、私なりには一人ひとりのお話を聞き、人としての信頼関係を作るのを意識してました。軽く相談に乗った話でも外に出さず、信じてもらえる良い先輩でいること、指摘はその場で行って根には持たないこと。それが未熟な私ができる最大限の愛であり優しさでした。こんな私の下でみんなお疲れ様でした。本当にありがとうね。
そんな器の広い皆さんにお願いです。同期の弱点、嫌な面を言うことは後輩マネージャーの前では控えてください。当然全員が仲良しになることは不可能です。ただ、皆さんの同期選手は後輩にとっては先輩ですし、後輩から舐められるのは違うと思います。今までのように守り合う関係性を大切にしてください。
同期選手へ
いつもの荒い絡みごめんなさい。ただ、私は行動の基準が自分自身であるため、自分がされたい態度・言動を行ってきただけだったので未だに何が悪かったか良く分からないです(笑)。相性の良さ悪さは別にして、とにかく途中から入った私を同期として受け入れてくれて本当にありがとう。この代だったからできたことだし、私もこの代だから頑張れた。私の20歳、21歳、22歳をみんなと過ごすことができて、そしてみんなの20歳、21歳、22歳を共有してもらえてとても嬉しい。
同期マネージャーへ
本当にありがとう。この場を借りて好きな面を述べるね。勝又は強者に強く弱者に弱いのが好き。自分なりの道徳観念があるし、人としての責任感が強いのが好き。風間は根が暖かくて他人を笑顔にしたいと強く思っている部分が好き。苦しんでいる人の味方になろうとするのが好き。内野は完璧主義者で粘り強く何かを達成できるのが好き。周りの雰囲気が読めて行動に移す行動力が好き。平山は道徳観念、価値観が一致するのが好き。根が暖かくて他人への包容力があるのが好き。
家族へ
母。私が世の中で最も尊敬する人、人生のメンター。歳を取れば取る程、思考も生き方もそっくりなんだよな。そんなママが大好きだし、いつも感謝しているよ。留学に行かせたのに学業以外で頑張る娘に「現地にいるソヒョンの判断が正しいだろう、十分頑張ってるの知ってるからそれだけで嬉しいよ」と言ってくれるママ。信じてくれて、応援してくれて、本当にありがとう。私もママみたいなママになりたい。
父。私が世の中で最も愛している人、親友。欲張りな娘で本当にごめんね。会食で酔った夜には真っ赤な顔で毎回「へへ、今空いてるお店がパン屋さんしかなくて」と言いながら買ってきたパンを並べる可愛いパパが私は大好きだよ。ひたすら家族のために働いてくれて本当にありがとう。社会人引退、一足先におめでとう。これからは、一人前のできる娘になれるよう頑張るから、パパは念願の中華料理バンバン作りな〜。引退して戻ったら毎日デートしようね。
兄。おーい元気かーい。
ひたすら愛を持って育ててくれて本当にありがとうございます。生まれ変わってもこの両親に出会い、兄ちゃんの妹でいたいです。これからは少しずつ恩返しのできる娘でいられるよう、頑張ります。
私の未熟だった20代初めのパズルを皆さんと一緒に作ってもらって、そして皆さんの大切な青春の記憶を共有してもらって本当にありがとうございました。お陰様で私の20代は、皆さんでいっぱいです。この記憶のパズルは胸に秘めてずっと大事にしますね。
次のブログは小澤星夜(4年・慶應義塾高)が担当します!
頭が大きいのに頭が悪い小澤星夜はとにかく可愛いです。その可愛さで今述べた短所なんて目に入らないし、心の底から優しい人柄を持つ彼は誰からも好かれています。万が一彼のことを嫌いな人がいたら私が先に遮断しますね。そんな星夜には私が勝手にBFF(Best Friends Foreverの略称)という役職をつけ、日々頼っています。いつもありがとうね星夜。
星夜の笑顔はサッカーをする時最も輝きます。彼ほど純粋にサッカーが好きな人は見たことがないです。そんな星夜がどんなブログを書くか、乞うご期待です!
《NEXT GAME》
10月22日(日)関東リーグ戦 第18節 vs 明治学院大学 @慶應義塾大学下田グラウンド 14:00キックオフ