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「政哉がいたからサッカーを辞めた」(髙木政哉)

2020.11.11

平素からお世話になっております。泰輔(4年・上田高)からバトンを預かりました、環境情報学部4年の髙木政哉です。

泰輔は最初にできた慶應の友人で、今も一番仲良くて尊敬する家族みたいな存在です。彼のストイックで繊細で可愛いところは4年間ずっと見てきたし、これからもずっと見ていきたいものです。社会人になっても週1で人形町行くから覚悟しといて。

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上野千鶴子教授 平成31年度東京大学入学式祝辞
『あなたが今、「頑張ったら報われる」と思えるのは、
周囲の環境が、あなたを励まし、背を押し、手を持って引き上げ、褒めてくれたからです。
世の中には、頑張っても報われない人、
頑張りすぎて心や体を壊した人がいます。
頑張る前から「しょせんお前なんか」「どうせ私なんて」と意欲を挫かれる人達もいます。
あなたの頑張りを、自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。
恵まれた環境と能力を、
恵まれない人々を貶めるためにではなく、
助けるために使ってください。』
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蝉時雨がグラウンドを吹き抜け
選手達の笑い声と共に空に吸い込まれていく。
晩夏の熟した日差しは芝生をオレンジ色に照らしている。
ゴール裏でだらりと座り、靴紐を解く。

お前が言った様な、
かっこいい先輩になれているなら。

今までサッカーをやってきた意味があったんだろうか?

 
2017年4月上旬

AM 5:30

遠くで犬が吠えて、
新聞配達のバイクがブレーキを掛ける。

世界はまだ眠っている時間帯。
眠い目を擦りながら自転車を漕ぐ。
薄暗い空と、白く曇る吐息。寒い。

春の訪れはまだやって来なそうだ。

大学の練習には付いて行けず
怠けきった浪人の体はボロボロだった。

プロサッカー選手になるという大きな夢を抱え上京し、
浪人ながらも慶應義塾体育会ソッカー部へ入った。

「何がなんでも1年以内にAチームに上がる。そしてプロになる。」
これが漠然とした俺の目標だった。

練習が終わり、内山コーチが新入生数人を呼び集める。
疲弊した数名が、
息を切らしながら集合した。

「君達は、ソッカー部を辞めた方がいい。」

―え。

「サークルとか、サッカーする方法は沢山あるから。」

―…はい。

何も言い返せなかった。
Dチームで練習にすら付いていけていなかった。
自分の存在意義とは?
心にポッカリと穴があいた。

 
「なぜ大学で、体育会ソッカー部で、サッカーを続けるのか。」

 
この部で全員が問い続けるテーマ。

答えを探そうと目を閉じると
高校時代の一件が思い浮かぶ。

―政哉じゃん。相変わらずサッカーしてるんだね。
―おう、久しぶり。

かつてのチームメイトとの再会。
今はサッカーを辞め、
学業に集中しているらしい。

家に帰って旧友との再会を親に話すと、
重い口調で彼の話を伝えてくれた。

「彼は、政哉がいたからサッカー辞めたんだよ。彼の親が政哉を見て、こんな人がプロになるんだって思ったから、サッカーは辞めさせたって。」

ただ必死にボールを蹴ってきた僕はそんなことも知らなかった。
最初は僕の夢だったプロサッカー選手が、
少しずつ大きな責任感に変わっていく様に感じた。

「大学になったら絶対に叶える。」

大学では、ひたすらサッカーボールに食らいつく毎日が過ぎていった。

悔しくて毎日自主練した日。
アイリーグに初めて出た日。
Aチームに上がった日。
早稲田戦で逆転負けして泣いた日。

全てが成長の糧になった。

2019年初夏

ゲームキャプテンを任せてもらえる立場になった。

―役職が人を作る
その言葉を信じ頑張った。

―多治見の為、後輩の為、同期の為。
対戦相手のビデオを何度も見返した。
誰よりも熱く戦った。
チームメイトとたわいもない話、サッカーの話。色々な話をした。
全員に愛を注いだ。

―そして
Iリーグは5連勝。最高の形で進んだ。

戦っていく中で
プロになりたいという思いが薄れ、
この仲間の良いところを引き出したい。
この仲間と勝つ喜びを味わいたい。

そう思うようになった。

1年生の時、
「ソッカー部をやめろ」と言われた時。
「なぜ大学で、体育会ソッカー部で、サッカーを続けるのか。考えろ。」と言われた時。

曖昧な答えしか返せない自分が情けなかった。
その答えを探しながら、必死にサッカーを続けていた。

その答えが見つかったのは
3年の夏の終わり。

試合を終え、ストレッチしながら話をしていた。

見慣れたグラウンドの風景。
脱いだユニフォーム。
ほんのり汗臭い。

後輩が水を飲み終え、口を開いた。

 
『ねえ俺、政哉みたいなかっこいい先輩になりたい。』
『このチームに政哉がいてくれて本当によかった。』

 
彼が何気なく投げた言葉は、心の深くに届いた。

―冗談でも嬉しいよ。



蝉時雨がグラウンドを吹き抜け
選手達の笑い声と共に空に吸い込まれていく。
晩夏の熟した日差しは芝生をオレンジ色に照らしている。
ゴール裏でだらりと座り、靴紐を解く。

お前が言った様な、
かっこいい先輩になれているなら。

今までサッカーをやってきた意味があったんだろうか?

 
今なら胸を張ってあったと言える。
全員の居場所を作る為に邁進した日々。
俺の存在意義は無垢な後輩に見つけてもらった。

 
ピッチを後にし、部室に戻った。

 
目の前には、入部初日からお世話してきた後輩が座っていた。

 
「俺ってどんな先輩?」

 
「んー最初の日、集合時間伝え間違えられて、ヤバい先輩だと思ったよ。」

「えっ、あっそうだっけ、ごめんごめん。」

真のかっこいい先輩になるのは難しい。

後輩の皆。ありがとう。
本気でサッカーできたよ。

掛けくれた言葉、頑張ってたプレー、全てが思い出です。

 
後輩に一つだけ。
君の輝かしい努力と成果の裏で、誰かの夢が絶えたかも知れない。
君がスタメンだったから、サッカーを辞めた人がいるかも知れない。
君が合格したから、落ちてしまった人がいるかも知れない。

慶應生、ソッカー部員なら、そのことを忘れないでください。
落ち込んだ時も、うまくいく時も、その誰かの為に頑張って欲しい。
君達は誰かの夢であり、憧れです。

 
そして
悩んだらいつでも連絡して下さい。

 
最後にもう一つ。
大好きな同期、ずっと大好きです。
大好きな家族、ずっと大好きです。
今までありがとう。これからも宜しく。

 
明日のブログは山田武明(4年・千種高)が担当します。初めての練習の日に何故か僕の家に泊まりに来て以来、泰輔と3人で色々な場所に出かけ色々な話をしました。同期や後輩にこれ程愛される理由は、完璧な外見と隙のある中身のギャップが愛おしいからでしょう。社会人になっても週1で人形町行くから覚悟しといて(2回目)。浪人や代替わりなど、修羅場を強靭なメンタルで乗り切った彼の熱いブログに乞うご期待!

《NEXT GAME》
11月14日(土) 関東リーグ戦 第17節 vs順天堂大学
13:30キックオフ @流通経済大学龍ケ崎フィールド

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